電波オークションって何?

2017年09月19日 23:00

政府が電波オークションを検討しているそうです。オークションは日本語に訳すと「競売」。国有地を払い下げるとき普通にやることです。「入札」と訳されることもありますが、今まで世界各国で行われた電波オークションは値段を隠して入れる入札ではなく、すべて公開の場で値段を競り上げていく競売です。

たとえば60メガヘルツを3つにわけて売るとしましょう。まず政府が「20メガヘルツの免許を1000億円で買う会社はあるか?」と聞き、5社が応じたとすると、これでは3スロットに対して多すぎるので1200億円に値上げします。ここで1社がおりると残り4社なので、次は1300億円…

というように値上げして、2000億円まで値上げしたところで残る1社がおりて3社だけになったら、競売は終わりです。この3社は1週間以内に、2000億円を現金で政府に払い込まないといけません。これはすごいお金ですが、ソフトバンクの営業利益の2ヶ月分ぐらいです。日本で一番もうかっている通信業界にとっては、大したことありません。

「オークションをやったら免許料がコストに上乗せされて電話料金が上がる」という人もいましたが、そんなことは起こりません。2000億円はもう払ってしまったサンクコストなので、値段を上げても返ってこないからです。

これは都心で高い土地を買ってそば屋を営業するようなもので、「土地代をそばの値段に上乗せしよう」と思ってざるそばを3000円にすると、客が減るだけで土地代は回収できません。現実にはオークションをやった国では競争が激しくなって、通信料金が下がりました。

2000年に行われたヨーロッパの第3世代(3G)オークションでは、バブル的な値段がついて、落札した通信業者がたくさんつぶれました。その原因は免許料を通信料金に上乗せできなかったからです。つまり「オークションで通信料金が上がる」という話と「業者の経営が悪化する」という話は矛盾しているのです。

現実に起こったのは経営悪化で、これはユーザーにとっては問題ありません。業者は困りますが、ビジネスとはそういうものでしょう。「この免許料は高すぎる」と思ったら、落札しなければいいのです。うまく行けば何兆円ももうかるビジネスで、失敗しても損がゼロというのは虫がよすぎます。

日本の問題はオークションにかける電波があいていないことですが、本当はあいています。たとえば茨城県のテレビ中継局には13~52チャンネルの40チャンネル(240メガヘルツ)割り当てられていますが、使われているのは図の赤い部分だけです(GはNHK総合、Eは教育、Nは日本テレビ、TはTBS、Fはフジ、Aはテレ朝、Vはテレ東)。テレビ局はむだに電波をふさいでいるだけなのです。

地デジのチャンネル割当(茨城県)
図でわかるように水戸では、13~15と16~20の7チャンネルしか使っていません。今は県内でバラバラの周波数を使っていますが、地デジではそんな必要はないので、この電波を新しい技術で整理すれば、茨城県全体で13~20チャンネルにまとめることができ、21~52チャンネルがあきます。

関東地方でも地上波は12チャンネルしか使っていないので、13~25チャンネルがあれば今までと同じ放送ができます。電波の割り当ては全国どこでも同じですから、残る26~52チャンネル(162メガヘルツ)をオークションにかけたら1兆円以上で売れるでしょう。

これはだれも損しません。通信キャリアはお金をはらいますが、それは彼らが免許料より大きな利益を上げるからです。テレビ局は今まで通り放送できます。電波を整理するコストが(数億円)かかりますが、それはオークションの免許料で出せばいい。電波利用料は廃止してもかまいません。

いちばん得するのは、電波が有効利用されて通信がしやすくなるユーザーです。通信料金も安くなり、新しい業者が参入してイノベーションも起こるでしょう。電波オークションは、みんなが得するしくみなのです。こまかい疑問については昔FAQに書いたので、大人のみなさんは読んでください。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)
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