新聞の書籍広告などを見ていると、「脳科学が解明した最強の勉強法」「心理学でわかった最高の勉強法」…などという書籍が頻繁に出ています(先のタイトルは私が適当に付けたもので、もし実物があっても本稿とは関係ありません)。
また、「英語は○歳まで」とか「○歳までの学習で人生が変わる」…などというタイトルの書籍もたくさん出ています。
しかし、私は、自分で実践して「役に立った方法」しか評価しないようにしています。
もちろん、脳科学や心理学、その他の学問分野を軽視している訳ではありません。
ただ、素朴な疑問として、脳科学や心理学等がそんなに強力な武器であるなら、世の中から「心の病」が一掃されているはずではないでしょうか?
理論によってプラスの効果が劇的に上がるのであれば、「心の病」や「犯罪気質」「粗暴な性格」その他マイナス要因も容易に解消できるはず。
容易とまではいかなくとも、きちんと治療すれば除去できなければおかしいと思うからです。
現代科学が強力であることと、現代社会で「心の病」や「犯罪気質」が蔓延している事実と相容れないのです。
また、「○歳まで」という類の本は、個人的には(あくまで個人の意見としてですが)質(たち)の悪い脅迫本と変わらないのではないかとさえ思っています。
少なくとも、子供を心配する親心の逆手を取って書籍を売ろうとしていると考えています。
私も、「英語脳の回路ができるのは○歳まで」という本を読んで、慌てて、ローマ字も習っていない小4の娘に英検五級のテキストと問題集(CD付き)を叩き込んで、合格点より7点か9点も上で合格させました。
しかし、中学受験勉強をしている間に、娘は英語をすっかり忘れてしまいました。
その後、幼児期の英語学習の効果が現れた形跡はありません(汗)
脳の動きや精神の活動は、おそらく未だ未知の領域の方が遥かに広く、数百年後には、今の学問の段階を「錬金術研究に勤しんだニュートン」のようなものと揶揄される恐れすらあります(ニュートンが本気で鉛を金に変える研究をしていたのかどうかについては異説もありますが…)。
ただ、おそらく殆どの方々に賛同していただけるであろう「最強の勉強法」は「他人に教えること」でしょう。
まず、内容を自分が理解していないと他人に教えることなどできません。理解していない人が教えると、内容がハチャメチャで質問に答えることすらできません。
次に、教えているうちに自分自身の理解が深まり、内容が頭に定着します。しっかり記憶として保存されるのです。
娘が幼児の頃、「どうしてお母さんのことをママというの?」と訊ねられました。
親のメンツにかけて(笑)何とか回答を出そうと思った私は、欧米の言葉だけでなく、中国語でも母親を「ムーム」、アラビア語でも母親を「ウーム」というような発音であることを知りました。
「ママとかマームというのは、赤ちゃんが最初に話す言葉を母親のことだと勝手に解釈しているだけじゃないか。日本では「マンマ」というだろ。海外の多くの国々では、赤ちゃんが母親を呼んでいると解釈しているんだ」と一応の回答を出しました(なお、真偽は不明です)。
その後も、中学受験勉強で娘や娘の友人などに勉強を教えたところ、ずいぶん私自身の知識が増えました。
これは司法試験予備校等で教えていた時にも感じたことで、「教えること」こそ「最強の勉強法」だと実感した次第です。
予備校や塾で講師のアルバイトをした経験のある方なら、きっと同意していただけると思います。
「情けは人のためならず」ではありませんが、「教えは人のためならず」なのであります。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年10月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。