FRB議長人事レースの行方を占う

久保田 博幸

米国のトランプ大統領は17日、FRB議長を既に名が挙がっている5人から選ぶつもりであり、近く発表すると述べた。トランプ大統領は11月3~14日に日本を筆頭にアジア各国を歴訪する予定で、この出発までに発表するようである。トランプ大統領はイエレン議長と19日前後に面談した後、人事案を正式に固めるとみられる。

トランプ大統領が絞り込んだ5人の候補はパウエルFRB理事、ウォーシュ元FRB理事、テイラー米スタンフォード大教授、コーン国家経済会議(NEC)委員長、そしてイエレン議長となる。

パウエル氏は共和党のジョージ・ブッシュ政権で財務次官を務め、中立派とされる。これに対してスタンフォード大学経営大学院講師を務めるケビン・ウォーシュ元理事は同じ共和党ながらタカ派とされる。テイラー米スタンフォード大教授も共和党に近くタカ派の代表格ともいえる。テイラー氏は本命視はされていなかったが、ホワイトハウスでの面談でトランプ大統領に好印象を与えたとされ、市場では議長候補として脚光を浴びつつある。コーン国家経済会議(NEC)委員長に関してはトランプ大統領と距離も出来ているようで、議長レースから後退しつつあり、ウォーシュ元理事の可能性も後退しつつあるという。

トランプ大統領に指名の選択権があるため、FRB議長候補の予想は難しい。しかし、5人もの候補から絞るということ自体、イエレン議長の再任の可能性は薄いということなのかもしれない。これはイエレン議長本人の意向も重要となるが、健康への不安もある。予定されるトランプ大統領とイエレン議長の会見では、イエレン氏本人の意向の確認とともに、自分以外の後継者のなかからの推薦者を確認するためのものとの見方もできなくはない。

そうであれば、いまのところ本命は現役のFRB理事でイエレン議長を補佐してきたパウエルFRB理事といえるのではなかろうか。トランプ大統領も就任後はイエレン議長を「大いに尊敬している」と選挙期間中の批判的な態度を一変させ、いまのFRBの政策にも理解を示しているとみられ、政策の継続が念頭にあればパウエルFRB理事の議長昇格の可能性は高いように思われる。

ダークホースがトランプ氏の好感度が上がったとされるテイラー教授ではあるが、正常化という実務がいま重視されているFRBにあっては外部採用はできれば避けたいところではなかろうか。ジョン・テイラー氏は70歳という年齢もネックとなるかもしれない。ちなみにパウエルFRB理事は64歳。年齢だけでみればウォーシュ元理事は47歳とまだ若い。イエレン議長は71歳と年齢にも不安が残るところではある(トランプ大統領も71歳ではあるが)。ちなみにコーン氏は57歳である。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年10月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。