薬剤師の不労所得論になぜ大騒ぎ

2017年11月07日 06:00

AI化の遅れが生む割高な医療

「医療費を食う薬剤師の不労所得」(10月30日)をブログで書いたところ、アクセス、抗議のコメントも異常な件数に上り、これに応える形で「薬剤師の不労所得論に殺到した抗議に反論」(11月2日)を投稿しました。これにも抗議、応援のコメントが多数、寄せられました。そこで3本目です。

コメントには、「心の病かと思います(私のことか)」といった類が相変わらず多いですね。「文句ばかりいう老害ジジイか」、「お前がさっさと死ねば、医療費も減るぞ」、「患者さんの見えないところで薬剤師がどんな仕事をしているのか、その空っぽの頭で考えたことはあるのか」と、罵詈雑言を浴びせかけられています。

品のないコメントは、文章の調子からすると、ごく少数の人が再三再四(恐らくそれ以上)、投稿し、抗議の数を増やすのに協力していると見られます。ネット社会は不特定多数から意見、情報を短期間で大量に集められるというツールを持っていると同時に、玉石混交の石ころも多いですね。改めて痛感しました。

玉石の中から玉を探す

玉もかなりあります。「あなたは感じた通りを書けばよい。応援します。抗議している薬剤師は図星だから、コメントを書いているのだろう」は、ありがたい言葉です。医療機関に詳しい知人は「研究論文や省庁の報告書でもない個人のブログに憤慨するほうがおかしい」と、メールを送ってきました。

「国立大学病院の勤務医です」と名乗る方のコメントはこうです。「記事は概ね正確であり、ほとんどの医師が感じている事実です。痛いところを突かれたというのが本音でしょう」。それに続く指摘は傾聴に値し、同感いたしました。

こうです。「医薬分業が始まったことで、患者さんたちにどの程度の恩恵があったのか、実感できませんし、費用に対してどの程度の効果があったのかが明確にされていない。ここが根本的な問題だ」。なるほどそうですね。医薬分業という大きな改革をしておきながら、効果の検証をしていないのは行政の怠慢でしょう。前回のブログでの「何万もの職場のない薬剤師の救済が、医薬分業の狙いだった」が本当なのでしょう。

医薬分業の検証をしない怠慢

薬剤師さんからは「医薬分業は大失敗だったかもしれない。診療所(医院)に薬剤師を雇えるような報酬を認めればよい」という指摘が聞かれました。もっとも知人の医療関係者は「むしろ病院のほうが経営は苦しい。医薬分業は病院にとって赤字要因となった」といいます。とにかく医療行政の事後検証がなされないのは問題です。

「真面目に働いている薬剤師は多い。医師や病院薬剤師と連携し、患者さんの訴えを共有している」という反論もありました。ブログのテーマの「薬剤師の不労所得」は、薬剤師に対する個人攻撃が狙いでありません。「報酬に値する仕事をしていない不労所得を生む医療、薬務行政、制度に問題ある」を考える問題提起なのです。

今後、どうすれはいいのか。あるコメントは「この分野がIT化、AI化から取り残されている」といいます。つまり情報化や人工知能化による業務や情報処理の効率化が遅れているというのです。「お薬手帳による薬歴管理は今どきひどすぎる。薬にバーコード表示を義務付け、マイナンバーで管理しては」という提言です。将来は、こうした対応策が必要になってくるのでしょう。

AI化で経費を減らした米国

コンピュータを活用した作業の機械化、情報化が必要なようです。「米国ではロボットへの切り替えが進んでいる。カリフォルニア医療センターの導入例では、5億7千万円の投資により、薬剤師100人をリストラした。投資額は彼らの1年分の給料より安かった」とのコメントがありました。

このようなリストラは薬剤師の雇用問題に波及します。ある薬剤師の海外留学の体験談や海外事例は参考になります。「本来の薬剤師は、日本でいう医師の資格と薬剤師資格を併せ持った存在だ。海外で彼らが尊敬されるのは、そういうことだ」、「海外留学した際、薬剤師と名乗ったらナース(看護婦)が驚き、尊敬された。海外では、薬の相互作用、薬物動態、禁忌事項、病態に基づく薬剤選択までやる」。それでもリストラされる時代です。

病院、医院の周辺では、多くの小さな調剤薬局が目につきます。調剤薬局行政は短い営業日数、短い営業時間で採算がとれるように設計されており、医療費を割高にする一因になっています。やっと財務省、厚労省が動き出しています。「もう一歩踏み込んで、効率的な医療体制を整備する時期にきている」(日経社説、3日)のです。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年11月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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