【更新】オークションで売却する電波は残っているのか

2017年11月12日 07:30

総務省の「電波有効利用成長戦略懇談会」の議論が始まった。規制改革推進会議でも議論が行われているが、重要なのはオークションの是非ではない。電波を売却してキャリアの独占する「財産」にするよりもWi-Fiのような形で共有することが合理的だが、問題はそこではない。

最大の難点は、もうオークションで有効利用できる帯域が残っていないように見えることだ。5Gで割り当てる予定の4~5GHzの帯域は、膨大な基地局が必要になる。いま使われている2.4GHzでもビルの中ぐらいしか電波が飛ばないのに、4GHz以上を公衆無線に使っても採算が取れず、オークションをやっても既存キャリア3社以外に応札する企業があるとは思えない。

ではもう電波は残っていないのかというと、実はそうではない。テレビ局が過大に占有しているUHF帯のホワイトスペースを区画整理すれば、約200MHzも空けることができるのだ。次の図は総務省が規制改革推進会議に出した神奈川県内のNHKの中継局の配置図だが、総合テレビだけで7チャンネル(42MHz)も使っている。

NHK横浜のテレビ番組は東京と同じなので、隣接局が同一チャンネルで放送する技術(SFN)を使えば、図の13、19、30、51chは必要なく、すべて東京スカイツリー(27ch)とその中継局で放送できる。SFNはすでに神奈川県の(NHK・民放あわせて)241局のうち233局で使っているそうだから、残る8局でも使い、図のように県内を27chで統一すればいい。

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これは局側では、スイッチを切り替えるだけだ。視聴者はテレビの裏側のリセットボタンを押すと、テレビが中継局をスキャンして、27chをリモコンの1chに割り当てる。置局に若干の手直しは必要かもしれないが、原理的には全県1波で放送できるので「難視聴対策のために独立した周波数」は必要ない。

相模湾の両岸で「同一チャンネルは使用不可」ということもありえない。SFNの条件は局間の距離を38km以内にすることだから、中間の平塚に27chの中継局を置けばいい。海上伝搬の問題はあるが、近い局の電界強度が十分高ければ干渉はカットできる。反射波は、アンテナの高さや角度を変更すれば対応できる。

横浜はスカイツリーから25kmぐらいしか離れていないので、(たとえば)横浜・藤沢・平塚・小田原の中継局を27chにしてSFNに切り替えれば、神奈川県のほぼ全域がカバーできる。同様に民放も整理すると、UHF帯40chのうち(NHK・民放で)39chも占有している電波が8chに整理でき、32ch(192MHz)空けることができる。

電波障害対策のコストは電波の価値に比べると微々たるものだから、オークションの供託金などに含めて落札した業者に負担させればいい。だが200MHzという帯域は既存3社が4Gで使っている帯域の合計より大きいので、すべてオークションで売却するかどうかは議論の余地があろう。

携帯キャリアがオークションをいやがるなら、一部は免許不要帯に割り当ててWi-Fiに使ってもいい。基地局を使う公衆無線LANに割り当てることもできるし、5Gの技術を使うこともできる(4GHz帯よりはるかに効率的だ)。新しい技術をもつ業者が参入すれば、いろいろなイノベーションの可能性がある。

追記:図を追加してわかりやすくした。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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