希望の党がコケた原因と今後の展望について

城 繁幸

希望の党ツイッターより:編集部

希望の党で玉木新体制が発足し、小池都知事が共同代表の座を降りた。同党にとってはいろいろな意味で節目となるだろうが、いいタイミングなので先の総選挙で同党がコケた原因を考察してみたい。今後の方向性を考える上でも総括は必須だろう。

まず、同党不振の理由としてよく挙げられる小池さんの「排除発言」だが、筆者はそれはあんまり関係ないように思う。というのも、民進党が機能不全に陥ったのは民進党左派グループ(その実態は「冷戦時代の東側カッコイイ!」というだけの冷戦期保守派)の存在が原因であり、それを排除する姿勢はむしろ筆者なんかは好感を持ったほどだから。実際アレに怒っている人にリアルであったこともない。

どうも左派系のメディアは排除発言を必死に不振の原因にしたがっているように見えてならない。自分たちに似た価値観が粗大ゴミ扱いされたのが気に入らないのはわかるが、共産党なんか一言でも執行部批判した瞬間に速攻で除名、追放なんだから価値観合わないグループを排除するのは政党なら普通だろう。町内会じゃないんだから。

以下は単純な筆者の感想だが、希望の党の失速は、やはり政策のハチャメチャぶりが原因ではないか。特に「消費税引き上げ凍結して内部留保課税」というのがまずかった。あの瞬間、周囲やSNSのTL上で一気に冷めた人が多かったように思う。

フォローしておくと、中の人たちもまさか本気でそんなもんが実現できるとは思ってないはずで、むしろ選挙対策としては「よく考えたつもり」だったのではないか。というのも、残念ながら世の中の半分くらいの人は「いかに自分の負担が少ないか」で政策を選ぶ程度の知能しかなくて、実現可能性とか「ただ飯なんて無いんだから中長期では必ず自分に負担が帰ってくる」なんて発想はなかったりする。まあその手の人たちはこの先落ちていく一方なので無視しとけばいいのだが、同じ一票を持っている以上、政治家はそこも取りこぼすわけにはいかない。

だから、近年、選挙で勝ち上がって成立した政権には、目先のことしか考えられない人たちがパクっと食いつきそうな“バカキラー政策”が必ず収まっている。

例:

・霞が関埋蔵金伝説
・日銀にジャブジャブ緩和させれば物価上がって景気も良くなる説

アホらしいんでいちいち解説はしないが、上記に共通するのは「オラはなんも努力せんでもお上がきっとなんとかしてくれる」というお上丸投げの姿勢だ。筆者は、たぶん希望のブレーンも、識者に冷笑されつつも、大衆の共感を呼ぶギリギリの線を狙ってボールを投げたとみている。共産党も似たような政策を掲げているわけだし。

でも、残念ながらそうはならなかった。理由は恐らく、希望の党を支持する可能性のあった層というのは、旧民進党の中道~保守よりの支持層や、都市部の無党派層の中でも比較的若い現役世代であり、ある程度のリテラシーを備えていてバカキラー政策に引っかかるどころか失望してしまったことだろう。特にこの層には財政再建も社会保障見直しも長年放置プレイされる中、一方的に社会保険料だけ消費税の3倍スケールで引き上げられ続けてきたことへの怨念めいた思いがある。
「増税も歳出見直しもなーんもやりませーんよ、みんな、この指とーまれ!」的なことを言われるとイラっと来る人が多い層でもある。

【参考リンク】増える社会保険料が物価低迷の隠れた要因に-賃上げ抑制

そういう意味では、麻生政権時に麻生さんが「俺は郵政民営化に賛成じゃなかった」と言って無党派層にそっぽを向かれて下野した時と構図は同じだ。

そう考えると、代表選で玉木氏が勝ったことで希望の党は首の皮一枚つながったように思う。玉木氏はなんだかんだ言われつつも政策通であることに変わりはないから、旧民進党路線とは決別し、隙だらけのアベノミクスと政策論で勝負するべきだろう。社会保障改革も手つかずだ。

お茶の間で昼間っからテレビ見てる高齢者向けの「仕事してるアピール」にすぎない加計学園問題なんてあれだけ頑張ったのに民進党崩壊したんだから、自分たちを必要としてくれているのは誰なのか、なんで09年に政権交代できたのか、よくよく考えるべきだろう。


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2017年11月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。