韓国や中国に狙われる日本のフルーツをどう守るのか?

黒坂 岳央

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

先日、ビジネス雑誌・プレジデントの2018年2月12日号に拙稿を掲載頂きました。内容としては中国や韓国に日本のフルーツが流出し、現地で栽培・販売されているという問題を取り上げたものです。

画像は掲載された記事の一部

過去のこの記事この記事で取り上げているのですが、今回改めて日本のフルーツがドロボウに盗まれている問題点についてお話をしたいと思います。

日本のフルーツ輸出はこれから

最近、日本のフルーツ輸出が大きな伸びを見せています。台湾や香港やシンガポールといった近隣アジアを中心に、りんご、ぶどう、いちごといった果物が軒並み急激な右肩上がりです。

私も1人の日本人として、日本のフルーツが海外においしいと賞賛されて受け入れられている事実を嬉しく感じています。ですがフルーツ輸出の伸びはあくまでここ数年間で見られるもので、数字で見てみるとまだまだ入り口に過ぎません。

例えばいちごを取り上げてみると2015年度の出荷量は約145,200トン(出典:農林水産省統計)で、その内海外輸出は約530トン(出典:財務省貿易統計)で全体の0.37%を占めるに留まっています。もちろん、近年の輸出の伸び を皮切りにこれからもどんどん右肩上がりになれば良いわけですが、フルーツにおける輸出ビジネスはあくまでこれから本格化していく入り口の段階にあるという認識です。

日本のいちごを狙う韓国

アジアにおけるいちご生産量の覇者は何といっても中国です。日本の約14.5万トンに対して、中国は約311万トンで世界一、韓国も約21万トンとやはり日本より上を行きます。日本のいちごは他国に比べてマーケットが小さく、その小さいマーケットを国内消費がほとんどを占めているという構図です 。

しかし、こと品質についていえば間違いなく世界一で、アジアのギフト用や健康志向の高い富裕層を中心にウケているというガラパゴス状態です。そこへやってきたのは韓国で、日本が誇る世界一品質の良いおいしいいちごの苗木を持ち出し、勝手に栽培して販売しているのです。農林水産省は被害総額を約220億円と発表、私個人としてはこの試算が正しいかどうかは懐疑的に見ています。

ですが、いちごが盗まれていい気分はしませんし、何より韓国は日本よりいちごをたくさん生産して海外輸出量は日本の4倍です。そこへ日本のおいしいいちごが持ち込まれて勝手に使われているのです。 このまま何もせずにいると、やがてアジアのいちごマーケットは韓国産ブランディングが醸成される恐れがあります。

シャインマスカットに目をつけた中国

そして狙われているのはいちごだけではありません。今度はシャインマスカットが中国に目をつけられています。

シャインマスカットは近年、大変な人気を博する大成功フルーツで当店でも、毎年取り扱いを開始すると「待ってました!」とばかりに飛ぶように売れていきます。知り合いの同業者社長も「シャインマスカットは売れすぎて毎回店舗が戦場のようになる」と嬉しい悲鳴をあげています。そんなシャインマスカットの苗木が中国に渡り、勝手に栽培されてネット販売されているというのです。詳しくはプレジデントの記事に書いたのですが、現地調査をしたところ中国24の地域で栽培されていることが事実確認されています。

フルーツの新品種開発は大変な時間や手間と費用がかかります。また、高い知識や栽培経験を必要とする高度な知的活動を伴うものです。日本人が時間と費用をかけて生み出したフルーツをこっそり持ち出し、海外で商売の道具にするドロボウを見ていい気分になるわけがありません。

ブランディングというドロボウ対策

すでに海の向こうにいちごやシャインマスカットの苗木が渡ってしまっている以上、ドロボウに抗議をしてもこっそりと栽培される状況をゼロにすることは出来ないでしょう。もちろん、やりたい放題の状況を止めさせ、日本のフルーツの栽培・販売に対する ロイヤリティの支払いを求めて、まっとうなビジネスへと改善する努力は必要です。

しかし、それ以上に「盗まれない対策」を急ぐ方が先な気がします。ドロボウに文句を言っている間に、他の家財を盗み続けられるのでは、いつまでたっても盗られっぱなしになってしまいます。農作物の輸出入をこれまで以上に厳しくチェックするのはいうまでもなく、海外における品種登録手続きを簡略化しスピーディーでコストの安いものへと変える努力が必要だと思います。品種登録をしておけば、勝手に栽培や販売する業者へロイヤリティの請求ができるようになるのです。

そして私が考える大局的で抜本的な対策は「ブランディング」です。日本のフルーツは一部の外国人には受けていても、まだ大部分はその品質の高さを実感できていません。マーケティングを進めて、日本のフルーツの素晴らしさをしっかりと伝え、「日本のフルーツは一流品質」という理解を世界レベルにすることです。そうすれば本物志向の人たちは他国のパクリ品ではなく、日本のフルーツを指名買いする状況を作ることができるでしょう。これは偽ブランドが横行する中国においても、わざわざ日本の銀座にやってきて本物のヨーロッパブランドを買い漁る行動と通じる部分があるでしょう。

とにかく一日も早くこれ以上の流出防止策の実行を心から願っています。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。