北の非核化は金王朝崩壊後に実現

2018年02月27日 11:30

北朝鮮使節団と協議するIAEA査察関係者(ウィーンのIAEA本部で撮影)

韓国平昌冬季五輪大会は25日夜、17日間の日程を終えて幕を閉じたが、韓国の文在寅大統領は閉会式前、北朝鮮の高官代表団と1時間余り会談した。韓国大統領府関係者が26日明らかにしたところによると、文大統領は北側に非核化の必要性を伝えたという。それに対し、北高官代表団長の金英哲朝鮮労働党副委員長兼統一戦線部長は非核化については何も言及せず、南北対話の重要性を指摘しただけに留まったという。非核化は北側にとって南北間のテーマではなく、米朝間で話し合うべき問題という立場を取っているから当然の反応だろう。

興味を引いた点は、北側が米国との対話については「用意はある」と答えたことだ。それに対し、サンダース米大統領報道官は同日、北側の発言に対し、まず非核化の実施が重要だという従来の姿勢を繰り返すだけに留めた。米国は北の対話政策が時間稼ぎに過ぎないと受け取っているからだ。実際、トランプ大統領は23日、国連安保理決議の制裁逃れの密輸に関わった56の船舶や海運会社などに、新たな制裁措置を発表したばかりだ。

ここで文大統領が北側に提案したという非核化の2段階行程表(ロードマップ)を考えてみたい。簡単に説明すれば、1段階目は核・ミサイル関連活動の凍結(モラトリアム)だ。2段階目に入って、実際の非核化プロセスに入る。文大統領の2段階の非核化構想は新しい提案ではなく、米朝間で過去、何度か話し合われ、最終的には暗礁に乗り上げた内容だ。

それでは、米朝会談が開催され、何らかの合意が実現される可能性は皆無かというと、そうとは言えないのだ。今年11月に中間選挙(大統領選の中間年に実施される連邦議会や州知事など)を迎えるトランプ氏にとって、外交実績を積むという点で北との合意はプラスと考えるかもしれないからだ。

北の非核化の場合、問題は北の核関連施設に対する監視体制だ。この場合、ウィ―ンに本部を置く国際原子力機関(IAEA)が主要な役割を果たすことになる。北の非核化を監視するためにはIAEAの追加議定書に基づく特別査察の実施が不可欠だ。

IAEAと北朝鮮の間で核保障措置協定が締結されたのは1992年1月30日だ。IAEAは1993年2月、北に対し「特別査察」の実施を要求したが、北は受け入れを拒否し、その直後、核拡散防止条約(NPT)から脱退を表明した。その後、1994年に米朝核合意が一旦実現し、北はNPTに留まったが、ウラン濃縮開発容疑が浮上し、北は2002年12月、IAEA査察員を国外退去させ、その翌年、NPTとIAEAから脱退を表明した経緯がある。

そして2006年には、6カ国協議の共同合意が実現され、北の核施設への「初期段階の措置」が承認され、IAEAは再び北朝鮮の核施設の監視を再開したが、北は09年4月、IAEA査察官を国外追放した。

それ以降、IAEAは北の核関連施設へのアクセスを完全に失い、現在に至る。すなわち、IAEAは過去9年間、北の核関連施設への査察活動ができなかった。IAEAには現在、北の寧辺核関連施設の査察経験がある査察官はほとんどいない。米国の監視衛星の写真を基に北の核活動をフォローしてきただけだ。寧辺核関連施設4号室を査察したIAEA査察官は既に退職した。そこでIAEAの天野之弥事務局長は昨年8月、査察局内に北朝鮮の核関連施設への専属査察チームを発足させたわけだ。

いずれにしても、IAEAの査察が実際再開されるまでにはまだ時間がかかるだろう。北は日韓米の結束を破り、対北制裁の緩和を何とか実現しようと腐心することは目に見えている。

最後に、金正恩氏は大量破壊兵器の一時凍結に応じたとしても、非核化は拒否するだろう。北の通常兵器は古く、脆弱であり、隣国・韓国軍の近代兵器体系には太刀打ちできない。国民経済の復興までには時間がかかる。そのような状況下で、核兵器こそ唯一の北のセールスポイントだ。それを安易に捨てることはないだろう。

国際社会の制裁に直面して、北の政治、経済情勢は次第に厳しくなってきている。日米韓は北の甘い招きには要注意だ。トランプ大統領が主張するように、制裁を継続し続けることが現時点では最も効果的な非核化プロセスだ。実際の北の非核化は金王朝独裁体制が崩壊した後に実現される、と考えるべきだろう。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年2月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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