米朝会談への日米協力は大谷の二刀流並みに成功

2018年04月29日 22:00

李雪主夫人や李与正氏参加で行われた晩餐会(韓国大統領府Facebookより:編集部)

南北声明は予想されたとおり空っぽで何もない。しかし、金正恩が夫人の李雪主や妹の李与正を伴い、また、彼女たちがものをいっているのは、金正恩が世界からどう見られるかをよく意識しているということであり、希望が持てる。かつてゴルバチョフがライサ夫人と一緒に西側のカメラの前に出てきたときに何かが変わると思った。

文在寅もなかなかいい。なぜなら、彼は無価値だからだ。これまでの米朝対話を進める場合、韓国の大統領が何者かであろうとすることは交渉の阻害要因でしかなかった。なんの役割も果たせないのに、何者かであることを要求したからだ。

しかし、文在寅は“金正恩の大使”でしかない。盧武鉉政権下で北との交渉に当たっていた文在寅は、北にさまざまな弱みを握られている。あのころ何を言ったかを公開されたら文在寅はおそらく韓国でもたない。

なにしろ、政権が代わった時に、新しい大統領は文在寅を許さないだろう。そのときに、金正恩の秘密の暴露は文在寅に生命の危機すらもたらしかねない。だから、文在寅は独自の動きが出来ないし、北からもアメリカからも、もちろん日本からも中国からも何も期待されていない。これは、たいへん好都合だ。

今回は、トランプと安倍の強硬路線が絵に描いたようにうまく行っている。うまく行きすぎというのが意外と言うだけで想定外では全くない。困ったことは日本のマスコミがそう報道しないことだが、そんなのは想定内だ。それにいい加減なことした攻撃すると脅して上手くいくってもノーベル賞はくれないだろうがそれも想定内だ。

しょせん、安倍やトランプがうまくやったとしても、日本の偽リベラルマスコミは現実を見るのが嫌だろうし、見て何を思ったか正直に書くはずない。大谷の二刀流を「無謀」と言った評論家は白旗上げているのに比べて往生際が悪い。

それにしても、トランプは今回は素晴らしい。やることが徹底している。うっかりすると柔軟路線に傾きそうなティラーソン国務長官のクビをきったのは、徳川家康が大坂の陣を前に大久保忠隣を改易したのを思い起こさせる。

ポンペオ新国務長官は駐韓大使に日系ハーフのハリス元太平洋艦隊司令官を充てる。オーストラリア大使に予定されていたが公聴会は中止。ハリス氏は中朝に厳しい姿勢で知られており断固たる姿勢を南北朝鮮と中国に示すのに最適である。トランプは場合によっては席を立つ覚悟なしに良い交渉は出来ないといっている。これこそ、北と交渉する時に一番の要諦だと思う。

日本はトランプに安直な妥協をしないように釘をさしておけば、何もしないのがいちばんよい。日本は核や拉致が解決したら経済協力をすることを日朝平壌宣言で約束しているが、条件が満たされたかどうかを決めるのは日本だ。立場が強いのだ。

完全な核放棄をし、拉致問題を解決したら、そのときは、北におおいに協力したい。日本と高句麗(北朝鮮)は唐と新羅(韓国)のおんぼろ同盟に対して好ましい同盟を結べるだろう。拉致をし、核開発したから困ったことになったが、もともと、金正恩一家は親日的だ。

統一については、それが近づいたと感傷に浸っている愚か者が多いが、そのコストをよく考えているのか。

まず経済的には、慌てて統一したら経済は破綻するだろう。東西統一から2年ほどして、ドイツ連銀のティトマイヤー総裁の話をフランスの有力者たちと内輪の会合で聞いたことがある。そのときに彼がいったのは、東ドイツ出身者は市場経済においてまったく使い物にならないということで、それが誤算だったということだった。明治になってほとんどの武士が教育はあっても武士の商法で身を立てられなかったのとおなじだ。

それを韓国で支えねばならない。いまでも、アンケートでは脱北者の3分の1くらいは、罰せられないなら北に帰りたいと言っているくらい、彼らが市場経済に同化するのは難しいことなのだ。

しかも、東西統一のときは欧州全体で受け止めたのでなんとかなったが、20年くらいドイツ経済は不振が続いた。しかし、東ドイツは西ドイツの4分の1ほどに対して北は南の半分、分断されていた期間は35年に対して70年だ。

70年別居していた家族が一緒に暮らせるようになったといって同じ屋根の下で暮らすことにしたら絶対にうまくいくはずない。あわてて統一などしたらとんでもない大混乱になって、不満が渦巻き、過激な民族主義に走り日本を敵にして何やり出すか分からない。

もし南北で自由選挙したら、北の住民がキャスティングボードを握るだろう。ろくな政権にならないだろうし、かなりの確率で金正恩大統領だ。

ほとんど何も成果のなかった南北首脳会談だが、ひとつ結構なことがあった。北朝鮮が日本標準時に復帰することを金正恩が表明したらしい。北は日本標準時から30分遅らせており、南も追随するという検討がされていたが、北が日本標準時に戻すそうなので、きっといまのまま南も日本標準時にとどまるだろう。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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