日大は、アメフト部も危機管理学部も廃止せよ

新田 哲史

NHKニュースより引用

アメリカンフットボールの日本大と関西学院大との定期戦で、日大選手が悪質なタックルで関学大選手を負傷させたことを巡り、日大の内田正人監督は19日、関学大を謝罪に訪れ、その後の報道陣との会見で監督辞任の意向を表明した。

関学大が抗議文を日大に送り、真相解明を求めたのに対して日大側は十分な回答ができず、事態は「社会問題」に発展。直接の謝罪や辞意表明のタイミングが遅きに失したばかりか、19日の記者会見でも自身による“相手選手つぶし”の指示の有無については「関西学院大学への文書でもって回答いたします」などと持ち越した。

この間、報道では、内田氏の関与について疑惑を深めるような関係者の証言が相次いでいた。しかし、この19日の段階になっても真相は明らかにされていない。ここまでの日大側の対応について、内田氏が、大学ナンバー2の常務理事でもあり、人事権を握っている組織構造が原因であるかのような見方も取りざたされている。実際、18日の大学理事会でも、広報部が「この問題を話し合わなかった」(朝日新聞より)と報道側に説明したこともまた危機意識の薄さを印象付けることになった。

理事会に内田氏が出席したかどうか、TBSの取材に広報部は「ちょっと分からない」などと無責任な回答をしているが、一部では、実は、この問題を話し合っていたという情報もあるようだ。仮に理事会で話し合っていたとすれば、なぜ内田氏の出席の事実も含めて“隠蔽”するのか。内田氏やアメフト部だけでなく、日大全体への社会の不信感につながりかねず、まったくもって疑問だらけだ。

記者時代から、さまざまな組織の危機管理対応をみてきて、いまも個人会社の仕事で企業等にアドバイスをすることもたまにあるが、危機対応には組織内に強いリーダーシップが要る。「実力者」である内田氏が「当事者」にもなったために組織全体が機能不全を起こしているのかは分からないが、いずれにせよ、不可解な対応に終始している。

もはやネット上では失笑のネタにされているが、日大は2年前に危機管理学部を創設。同部サイトによれば、副学部長は、リスクコミュニケーションやメディアコミュニケーションを教えており、教員の顔ぶれの中には、私の古巣で防衛、安全保障のスペシャリストだった元記者の大先輩もおられるのを知って驚いた。

学部長の福田弥夫氏は損害保険法などが専門の法学者のようだが、この問題で、福田学部長など同部の関係者が裏方として動いているのだろうか。福田氏がFacebookで対外的には沈黙を貫いていること自体は構わないのだが、少なくとも表面的には学部の名が泣いている状況であり、とても中で動いているようにはみえない。

アメフト部はすでに下級生を中心に大量退部の動きまで報じられ始めた(出典:日刊スポーツ)。名門が消え去っても仕方のない状況だ。

そして、危機管理の教科書に「バッドケース」の典型例として載りそうな今回の事態に対し、日大の危機管理学部の学生たちの困惑や憤り、無念は想像するに余りある。もちろん、高校生がこんな大学で危機管理を学びたいとは思わないだろう。

前述の先輩筋の元記者には申し訳ないが、学部のレゾンデートルも含めて日大全体の組織が崩壊したとしか言えない。来春以降の学部の新規募集は停止し、学部廃止も検討せざるを得ないのではないか。少子化で大学の経営環境が厳しくなる中、日大そのものが揺らぎかねない事態になっている。