日大アメフト会見は小保方会見を思い出す

前回の記事は日大監督・コーチの会見直後に書いたものですが、その後のマスコミの騒動を見ると、「小保方会見」を思い出してしまいます。

「小保方さんは嘘を言っていない」「あの目を見れば真実を語っているのは間違いない」

今回でいえば、小保方さんにあたるのは加害選手になります。「選手は嘘を言っていない」「嘘を言っているのは監督だ」。ほぼそれ一色になっている感じです。

大事なのは、表情よりも証言内容に矛盾がないかどうか、じゃないでしょうか。

 

但し今回の件については、大枠に関しては証言に矛盾がない、という点は全く違います。選手は「監督の指示があったと思った」と言ってるだけで直接指示されてとは言ってませんので、監督が「指示していない」と言っていることと、全く矛盾しません。マスコミが勝手に「監督が指示した」「監督は嘘を言っている」「選手に責任をかぶせようとしている」と騒いでいるだけです。ちなみに、監督は「責任は自分で取る」と何度も繰り返し言ってますので、「選手に責任をかぶせようとしている」決めつけも、おかしいです。

この辺はアメフトに関して知識があるかどうかで、判断が変わってくると思います。私は競技経験はなく関東大学アメフトを数十年観てきただけのファンですから、正しい判断をしているとは言い切りませんが、全くアメフトを観たことのない人よりは、真相に近い判断が出来るだろうと思います。

アメフトという競技はポジションごとに細分化されていて、実際の選手指導や起用などに関しては、担当コーチに任されていることが多いです。日大の場合、特に監督が大学の理事を務めていたこともあり忙しいでしょうから、わざわざ一選手に対する指示を、いちいち監督から出していたとは思えませんでした。監督側の会見で、やはりコーチに任せていたという発言があったので、やっぱりそうだろうな、と思いました。

 

選手側の会見を見て私が思ったのは、よく何月何日に何を言われたとか、細かい所まで覚えていたな、ということです。日記でもつけていれば別ですが、そうでなければ、事前に弁護士と打ち合わせをして、多少記憶があいまいなことがあっても、話がつながるようにきれいに整理して文章にして会見に臨んだのだと思われます。

それに対して監督側の会見が準備不足だったのは明らかです。先に選手の会見はあったのですから、その証言内容について1つずつ、これは言った言ってない覚えていないと、事前に弁護士等と相談して何と答えるか決めておくべきでした。特に覚えてないことについては、何と答えるべきなのか、危機管理の専門家と相談して決めておくべきです。そうした準備をしておけば、ここまで騒ぎは大きくならなかったでしょう。

 

事件の一番肝になる部分は、『コーチから1プレー目にQBを潰してこい』という指示があったら、今回の事件が起こるか、ということです。これに関して、事実関係において選手側とコーチ側に見解の違いはありません。

通常、この指示だけではあのプレーは起こりえません。但し、いろんな条件が重なったために起こってしまったのかな、というのが私の印象です。そういうことは社会でも多々あります。通常なら起こらないことが、条件が重なってしまったために、運悪く起こってしまったのかな、というものです。

私はこのような結論を日大監督・コーチの会見を見ていて出したので、前回の記事のような、マスコミ質問のレベルが低い、という印象になりました。

 

この件について日大監督を悪者にすることが目的ではなく、真相解明をしたいのであれば、やはり競技経験者などが内容を整理してわかりやすい説明をして欲しいと思います。元関学QBの有馬氏にはその役割を期待したのですが、会見での質問内容を聞く限り、全体を俯瞰した見方をしているというよりは、選手側の立場だけに偏っている印象です。決まれば80ヤード級のタッチダウンパスになるけど、ブラインドサイドからQBサックを喰らいそうだな、という感じで、それこそディフェンスラインの選手に笛がなる前に潰されないように、しっかり広く見てね、と思います。

正直言ってこの話を引き伸ばしても、現役の選手たちに与える悪影響が大きすぎるので、早めに幕引きを図って欲しいです。これは明日の関学サイドの会見にかかっていますが、事実関係についてはここまでにして後は警察の捜査に任せる、再発防止策は日大単独では難しいだろうから、関東学生連盟の対応を見守る、というあたりで落ち着かせるのが得策ではないでしょうか。

 

前田 陽次郎