(特別寄稿)大統領・首相の理想的な在任期間は10年だ

2018年07月19日 06:01

IT見本市でドローンを手に取る安倍、メルケル両首相。それぞれ6年、12年とG7で古株に(官邸サイトより:編集部)

自民党の総裁任期は3年間で、これまでは再選までだったが、党則が変更になって3まで可能だ。もし、安倍首相が3選され、任期満了までつとめたら9年間ということになる。

一見、長そうが、世界の上位2500企業のCEOの平均在任期間は約6年半(コンサルティング会社のストラテジーアンドの年次調査)。日本の東証第一部上場企業の社長は、平均7.1年だ(会社四季報をベースにした東京経済大学の柳瀬典由ゼミの学生たちの計算)。

全国47都道府県の知事は、1947年に公選で選ばれるようになってから71年が経過しているが、これまで総計で310人ほどで、だいたい10年間、つまり、2期ないし3期が平均的な在任期間だ。

それに対して、日本の首相は、戦後、73年間で延べ35人で(吉田茂と安倍晋三は再登板しているので33人)、平均で2年で、極端に短い。かつては、フランスやイタリアの首相が短命で有名だったが、細川内閣退陣のころからの日本の政権交代の頻繁さはそれを上回るものだ。

それでは、主要国のリーダーの選ばれ方と任期を見ると、大統領直接選挙を実施しているのが、アメリカ、フランス、ロシアだ。

アメリカは4年任期で、連続して三選は禁止だ。戦後についてみると、トルーマン、アイゼンハワー、レーガン、クリントン、ブッシュ(子)、オバマが二期つとめている。再選に失敗したのが、カーター、ブッシュ(父)。ニクソンは再選されたが、ウォーターゲート事件で失脚。暗殺されたのがケネディだった。副大統領から昇格したジョンソンは再選には成功、フォードは失敗した。

普通に選ばれて2期目に挑戦した場合についてだけみれば、7勝2敗なので、よほどひどくなければ2期8年が標準ということになる。

フランスは、ドゴールが2期目から直接選挙で選ばれるようになり、当初は任期7年再選制限なしだったが、現在では任期5年、3選禁止である。第五共和制になってからの8人の大統領ではドゴール、ミッテラン、シラクが再選、ジスカールデスタン、サルコジ、オランドが1期のみ、ポンピドーが1期目任期途中で死去、マクロンが1期目の任期途中だ。だいたい、5年か10年か半々といったところだ。

ロシアは任期が4年で再選までで、エリツィンが再選されたものの任期途中で辞任して、代行を努めていたプーチンが2期つとめたあとメドベージェフに譲り自らは首相に就任し、4年後に復帰して現在、2期目。実質、20年間、ロシアを統治することになりそうである。

国会の多数派が首相を出す議院内閣制は、イギリス、ドイツ、日本がその代表だ。
イギリスでは下院が任期5年だが、途中で解散されることが多い。終戦直前の総選挙で労働党が勝利して以来、労働党2期、保守党3期、労働党2期、保守党5期、労働党3期、保守党が3期目となっている。

首相の交代は、総選挙の敗北のほか、長期政権になると総選挙の半ばあたりで交代して次の任期に備える。戦後の首相は延べ15人で平均在任期間は、5年弱で、サッチャーとブレアが10年余り、マクミラン、ウィルソン、メージャー、キャメロンが5年以上だから、普通は5年、評判が良ければ10年というあたりである。

ドイツでは、下院の任期が4年で、総選挙で敗れるか、死去したり高齢で引退しない限り、首相が途中で辞任することはない。ただ、比例代表制であるので、任期途中で連立の組み替えがあることがあり、エアハルトが辞任してキージンガーに交代したことがある。

戦後の首相は、わすか8人で、平均で10年足らず。アデナウアー16年、コールが13年、メルケルもすでに12年である。ブラントは5年で死去し、それを引き継いだシュミットも8年も首相の座にあった。戦敗国として不利な立場にあったドイツが外交で上手に立ち回れているのは、この政権の安定性が大きいと思う。

G7首脳陣ではベテランになってきた安倍首相(官邸サイト:編集部)

中国については、一党独裁国家なので、ほかと一緒にできないが、毛沢東が20年余支配したあと、鄧小平がいわば闇将軍のような存在だったのでややこしいが、鄧小平、江沢民、胡錦濤が10年ずつくらい支配し、習近平も同じかと思ったら、規約を改正して10年以上でも権力を独占したそうで、ちょっと独裁化が心配だ。

ただ、だいたい10年という長さがひとつのめどになっているのは、安定性と行き過ぎた長期政権の弊害除去とのバランスがほどよいところで、それが中国経済の大発展をもたらしたといえる。

そうしてみると、政権復帰後6年たって絶好調な安倍首相を交代させるのは、日本にとっても損失であり、世界的にも困ったことになる。

メルケルが国内を制御できず、トランプとも肌合いが会わない、メイはEU離脱交渉の難航で外交どころではなくなっている。イタリアもスペインも政権交代したばかりで少数弱体政権、カナダのトルドーも人気は高いが、先のケベック・サミットでのトランプとの衝突で露呈した若さが問題だ。

そうなると頼りになるのは、フランスのマクロン大統領とベテランの安倍首相という、比較的、トランプともケミストリーが合う2人で少なくともトランプの任期中はささえていくしかなさそうなのである。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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