NHKが天守閣についての文化庁〝岩盤規制〟を放送

八幡 和郎

『所さん!たいへんですよ「お城が大ピンチ:消える!?壊れる!?』という番組をNHK総合でやっていたが、このテーマは私がここ20年以上取り上げてきた、文部科学省の極悪非道な岩盤規制にかかわるものだ。

番組では、高松市で明治中期に解体された天守閣の復元のために写真や図面を探して3000万円の懸賞をかけているという話だった。写真は残っているのだが、内部の構造が分からないと復元を許可しないと文化庁がいっているというのだ。

城の復元ができない理由を説明する服部氏(NHK『所さん!大変ですよ』より:編集部)

ここで、「くまもと文学・歴史館」の服部英雄館長が解説に登場。文化庁に長年、つとめて城跡の保存などを担当していたこの分野のマフィアの親分だ。服部氏の解説では、石垣の保存が大事で、その上にあまりものを建てさせたくないようなことをいい、建てさせるとすれば、よほど材料がそろっている場合だけだというようなことが語られた。

また、番組では、かつて規制がゆるかった時代に許可された鉄筋コンクリートの天守閣が老朽化し、十分な修理もできないでいることも広島城を例に出して紹介された。なにしろいったん壊してしまえば再建の許可はまずでないからだ。

私はこの文化庁の厳格な方針を厳しく批判してきた。かつて「外観さえわかれば再建させる」という時代もあって、安土城は「ローマ教皇に進呈したと言われる狩野永徳の屏風が見つかればOK」といわれた。そこで武村正義氏が地元・滋賀の知事をつとめていたとき、バチカンに調査団を派遣したことがあるが、現行の基準では屏風が見つかっても安土城再建はダメなのだろうか。安直に規制を強化するなと言いたい。

鉄筋コンクリートで再建された天守閣は、老朽化したので建て直すのはダメといわれているが、それなら、地震で大破した熊本城天守閣は壊すしかないのか?どうも、これは、修理した上で残すのだが、それはマフィアのドンである服部氏を天下りで熊本が迎えているからというのではないか、と疑われてしかるべきだ。

(服部氏が就任したのは2016年4月の熊本地震の直前だから再建を許可してもらうためのバーターではなさそうだが、普通ならダメなことを認められるのだから天下り人事の功徳はあったのではないか)

しかし、文化財の専門家の判断は尊重されていいのでないかと言う人もいるだろうが、それなら文化庁は首尾一貫しているのかといえば、まったく違う。

城以外については、縄文時代の三内丸山遺跡とか古代の平城京大極殿とか、なんの図面も写真もなくても大胆極まる復元が許されている。

つまり、お城マフィアと縄文マフィアの恣意的な気分で運用されているだけなのだ。城の天守閣をどうするかというのは、文化財保護だけでなく、都市の景観や観光経済の観点からも総合的に検討されるべきものであると思う。大阪城にだっていまの基準では天守閣は建てられなかったが、その方が良かったとは思えない。

市長のきまぐれで決められても困るから、国との協議は義務づけて良いと思うが、文化庁のその担当官などの恣意的な運用を絶対視するのはおかしい。これも前川喜平が「正義」だと守ろうとして多くの人を不幸にしている岩盤規制なのである。