8輪装甲車開発中止の裏側②おまえらボーッと生きてんじゃねえよ!

2018年07月31日 06:01

開発を断念した装甲車の試作車(防衛施設庁サイト=現在は削除):編集部

前回に引き続き、陸自の新型装甲車開発頓挫のお話です。

耐弾性能満たす車両作れず次期装甲車の開発中止:防衛省(読売新聞)

前回も書いたように、今回のキャンセルの最大の原因は陸幕と装備庁の当事者意識&能力の欠如です。特に陸幕。軍用装甲車の開発を企画、指導する能力が全くない。

NHKの「チコちゃんに叱られる」じゃないけど、

おまえらボーッと生きてんじゃねえよ!

というところです。

まず、同盟国である米国を含めた、諸外国の動向に全く無関心。
情報収集も分析も全くやっていない。興味があるのは陸内部の政治力の調整だけ。

だから諸外国の軍隊がどのレベルの装備やら、今後のトレンドやらまったく把握する気も無いし、戦える装備体系を作る気も無い。

だから軽装甲機動車なんぞ怪しげな代物を平気で開発、採用する。
機械化歩兵のAPCなのに、分隊が乗れず、4名乗りの小型装甲車。
しかも基本無線も搭載していないので、分隊長が指揮も執れない。

下車戦闘は全員下車して鍵をかけて、装甲車は置き去り。まるでコントです。
その上固有の武装も無いから火力支援もできない。
カーゴスペースもろくにないので、弾薬や貨物も殆ど詰めない。

要求が7.62×39ミリカラシニコフ弾を防げればいいや、という仕様なので、7.62×51NATO弾や7.62×54ロシアン弾は防げない。値段を下げるためにスポールライナーも装備しなかった。

機械化戦闘を全く理解していない。
目先の調達単価を下げたり、専用の車輌部隊を作って、新たな(人員が必要な)部隊編成をしたりする面倒をさけたかった。

性能的には70年代レベルの代物です。
で、お値段は諸外国の同等品の3倍以上。

おまえらボーッと生きてんじゃねえよ!

ある意味吉田茂の言った「戦力無き軍隊」そのものを体現化していると思います。
これで禄を食んでいるのは犯罪的ですらあります。
仕事しない方がまだまだです。下手に仕事をして税金の無駄使いを垂れ流しているわけです

そもそも論で言えば、いつも申し上げていることですが、どういう装備を、いつまでに調達、戦力化して、開発、調達のプロジェクト総額はいくらかかるのだ、ということが決まっておらず、漫然といつ調達が終わるか分からず、総額がいくら掛かるか分からない。その年度の予算さえなんとかなればいいや、ということでやっていることに問題があります。

つまり、計画がないわけです。まともなものができる道理がない。

おまえらボーッと生きてんじゃねえよ!

また諸外国のように装甲車輌やその他の装備のポートフォリオを考えて、その一部として開発、調達をすることがなく、個別最適(しかもそれが最適でない)をで漫然と開発と調達を行っている。つまりは木を見て森を見ていない。だから装甲車輌のファミリー化も21世紀になってすら手がついていない。
多くの国では70年代ごろからファミリー化は始まっていました。

陸自には70~90年代に採用された装甲車輌が多数あるが、これらを近代化する計画も更新する計画も殆ど存在しません。例えば73式装甲車、82式指揮通信車、87式偵察警戒車、87式自走高射機関砲、89式装甲戦闘車、90式戦車、96式自走120ミリ迫撃砲、96式装甲車(一応新型8輪装甲車で更新される予定だが、その間の近代化される予定もない)、99式自走榴弾砲、MLRS、軽装甲機動車などです。

これらは殆ど近代化らしい近代化もリファブリッシュも行われていません。旧式車輌でもエンジンをオーバーホールないし換装し、電気系統を取り外して一新するなどのリファブリッシュを行えば稼働率は格段に向上するが、これをやっていません。まして近代化もされていません。

対して例えばフランス陸軍ではSCORPIONという計画があり、オーストリア陸軍ではランド400という計画があり、ドイツ陸軍でも同様の計画があります。これらでは装甲車輌更新のポートフォリオとそれに基づく、個別の車輌の開発や調達を決定し、タイムテーブルと、総予算を決めて、それを公表しています。

これらのプロジェクトでは例えば3種類の現用車輌を1車種に統合するということをやっています。米軍のハンビーでも5種類の現用を1車種に纏め、訓練、整備、兵站の負担を下げ、また量産による調達単価をさげています。こういう当たり前のことを防衛省、自衛隊はできないわけです。

それができないのは装備庁、陸幕、そして政治家が無能だからです。

おまえらボーッと生きてんじゃねえよ!

こんな連中に防衛費を2倍に増やしても無駄使いが増えるだけです。

もっと根底の話をすると防衛省にしても、自衛隊にしても組織防衛のためならば政治家や納税者を欺してもいいのだと思っていることです。事実平気でだまししています。前回ご案内した政策評価もそうですし、以前ぼくが問題にしたファースト・エイド・キットもそうです。お医者さんゴッコレベルの自衛隊のそれを、米軍と同等でありますと大臣や幕僚長を欺し、空幕は50億前後の救難ヘリを23.75億円で調達できますと官製談合を平気でする。石破さんが大臣だった時代はドイツ製のNBC装甲車は横幅ありすぎて日本では使えませんとこれまた嘘をつきました。

つまり、文民統制が全く機能していないということです。

その要因は記者クラブにあります。新聞、テレビなどの一部のマスメディアが記者会見を始め、多くの取材機会をとアクセスを独占し、我々専門媒体や専門記者を排除しているからです。記者クラブの記者は一般に専門知識がなく、海外の軍事情勢もしらず、単なる防衛省という役所の担当に過ぎません。しかもキツい質問をすると当局から嫌がらせをされるために、厳しい追及をしません。つまりは慣れ合いをやっているわけです。

ですから予算についても突っ込んだ質問なんかしません。

権力の監視なんかできるわけがありません。
そのくせ防衛省のスキャンダルが起こると、各社ぼくの所に話を聞きに来る(笑
こういうのをよその国ではジャーナリズムとは言いません。

おまえらボーッと生きてんじゃねえよ!

この体制が続く限り、まともな防衛装備調達は不可能です。

■本日の市ヶ谷の噂■
90式戦車のコンピューターの能力はPC98以下ということはよく知られているが、そのサイズはドラム缶の半分ほどと巨大であるとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年7月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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