耐弾性能満たす車両作れず次期装甲車の開発中止:防衛省(読売新聞)
防衛省は27日、陸上自衛隊の次期装輪装甲車の開発事業を中止したと発表した。開発を受注した小松製作所(東京)が、同省の求める耐弾性能を満たす車両を作れなかったため。同省は、試作品の対価として支払った約20億円の返還を同社に求める。
同省によると、防衛装備品の開発が技術的な理由で中止されたのは初めてという。
技術試験を実施したところ、車両を覆う防弾板の性能にばらつきがあることが判明。同社に改善を指示したが、
最終的に改善できなかった。
防衛省の「大本営発表」そのままの記事です。よっ、さすが発表ジャーナリズム!
と嫌みの一つもいいたくなります。しかも当局に発表に併せた報道。本当に記者クラブというやつは。
既に他社では中止という報道もあったのに、忠犬ぶりが笑えます。
だって商社は昨年の中ぐらいから既に代用車輌の件で動き始めていましたよ。
それに問題は装甲板だけじゃありません。装甲板だけなら質のいいものに交換するだけです。
装備庁に取材したところ、装甲板だけです、耐地雷・IEDも機動力も問題ありませんと(笑
装甲板に問題があったら耐地雷、IEDでも普通問題あるよね。
ぼくの取材した範囲ではミッションモジュラーシステムが巧くいかなかった、そもそも耐性は低かった。
不整地走行能力の不足などがあったようです。
元がNBC偵察車で、戦闘正面にでるクルマはない、だから装甲は気密のためものであり、耐弾性はおざなり。NATO規格でレベル1もないようです。そして野外機動力もこれまた、野戦やるわけじゃないからいらないよ、というお話でした。戦争を舐めているとしか言いようがありません。
路外走行に関しては96式も軽装甲機動車も同じで、装輪装甲車だから、いいよね、というレベルです。ですからこれら野戦用の装甲車輌ですら、演習場でスタックしているのはご存じの通りです96式なんぞ雪でもないのにチェーン巻いて、それでもスタックしています。
そしてNBC偵察車は馬鹿正直に道路法に合わせるために全幅を2.5メートル以下にした。そのためにとんでもなく胴長になって車内容積を稼ぐために車高も上げたわけです。それを新型装甲車も踏襲しちゃった。何しろカネがかけられない。
たった17億円で試作車5輌と開発やれと。しかもコンペで負けたらそれもでない。
仮に試作が1輌96式と同じとしても開発費は1億円(この程度の装甲車外国なら2~3千万円ぐらいです)ならば5億円、実際の開発費は13億円程度。
鼻くそみたいなものです。
開発失敗の原因は陸幕防衛部、装備部の当事者意識&能力の欠如です。
本来新規に開発すべきところを、開発費をケチったわけです。
しかもコンペに負ければ開発費は丸損です。
それでクズができた、おまえら業者が責任とれというは盗人猛々しい。
事業に拘わった時代の防衛部長や装備部長が腹きって辞任すべきです。
でも誰も責任取らないんですよね、この組織。
OH-1、AH-64D、FFOS、FFRSとか欠陥兵器や調達の失敗は多々あるけど誰も責任を取っていません。
防衛省の公表している平成25年度 政策評価書(事前の事業評価)には、以下のようにあります。
「諸外国においては、既に実用化された装輪装甲車として、米国のストライカー等があるが、各種脅威からの防護力等の要求性能、コストに関して総合的な観点から比較検討した結果、本事業の優位性が認められた」
これは「大本営発表」、つまり納税者を謀る虚偽です。もともなリサーチもしないで、鉛筆舐めて嘘書いただけです。文民統制上もどうかと思いますよ。納税者を平気で欺していいと思っているんだから。
さすが、ウィキペディアあたりを参照に文書作成することに疑問を感じない組織です。
だから今後も同じ過ちを繰り返すでしょう。
唯一評価できるのは事業をキャンセルにしたことです。
日本の納税者や野党は寛容ですよね。当事者意識の能力もなく、平気で自分たちを欺す連中を信じるんですから。その典型例が安倍政権首脳部です。民主党政権時代に、仙谷官房長官に「自衛隊様を疑うとはなにごとだ、自衛隊様を無条件で信じることが文民統制だ」と主張したのが丸川、世耕ら今の安倍政権の中枢の人たちです。
■本日の市ヶ谷の噂■
90式戦車の砲塔側面は25mm機関砲に耐えるために厚さが80mmあるが、10式戦車はコストダウンのために装甲を薄くしたので、砲塔側面装甲は25mm弾が貫通するとの噂。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年7月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。