私の、もっというと常見家の強みの一つは「華」である。娘も母も、嫁もそうだが。私は教科書的なイケメン、美男子ではないが、華がある。だから、実力が最高レベルではなくても、講演やメディアの仕事がくるのだと思う。
そんな中、読モライター問題が盛り上がっている。もともと、ライターの宮崎智之氏が提唱したコンセプトである。最近では、彼と中川淳一郎氏の対談でも取り上げられているので、ご一読頂きたい。
“Eランクの有名人”ほどネットで褒め合う 「読モライター」をめぐるモヤモヤ:PRESIDENT Online – プレジデント
セックスレス離婚”を綴るブロガーの末路 SNSで自分を切り売りするバカ:PRESIDENT Online – プレジデント
この件について著名ライターや編集者の間で炎上というか、激論があったようで。すべては追えていないのだけど。思うところがあるので、ツイッターに連投した。
昨日 #life954 のバーベキューで宮崎智之さんとご一緒し、読モライター論争が土曜の夜に起こっていたとのこと。知らなかった。このあたりの情報の感度が我ながらダメだなあと思いつつ、この問題については思うことがあるので、書き綴ることにする。
読モライターが是か非か、好きか嫌いか、本人のキャリア形成にとってどうなのかという問題以前に、まずは宮崎さんが定義した「読モライター」という「生き方」や「働き方」が成立してしまっている(食べられるかどうかは別として)という現実を直視したい。
また「読モライター」は現状において、(結果として)スティグマ化されたものだと言えるだろう。「私は意識高い系だ!」と胸を張って言う人が皆無なのと同様に、「私は読モライターだ!」とはなかなか名乗れない、のだろうな。
本人が「読モライター」だと認識しているのか、他者(業界の中の人や、読者)がそう思うのかという問題もある。
President Onlineに掲載されていた宮崎さんと中川淳一郎さんの対談、楽しく読んだのだが、モヤモヤする部分がある。私生活を切り売りしたり、若さを売りにしたら長くやっていけないのではないかという警鐘を真摯に受け止めるが、一… https://t.co/djFXaWryho
メディアをめぐる環境が変化し続ける中、キャリア形成も、よりくだけた言い方をすると「成り上がり方」「あがり方」も変化している。「読モライター」を否定したところで、業界全体が「実力派ライター」が食べられる環境をつくれていないという問題もある。
また、「読モライター」はいつまでもそうとは限らないし、「実力化ライター」だってそうだ。そもそも、物書き業はいつまで物書き業かという問題もあり。昨日 #life954 のハッシュタグで「番組が始まってから今までの津田大介さんの肩書の… https://t.co/L3Ik9vTwh6
これは肩書き問題、セルフブランディング問題でもあり。あと、この手の話は自分が名乗ったところで、周りがそう認めるかという話もあり。さらには「ジャーナリスト」と名乗っていても、ちゃんと取材している人か、取材した人の情報を集めている人かによる違いもあり。
で、巧拙の話をしだすとさらに面倒臭い。いかにも「読モライター」がダメで「実力派ライター」がスゴイかというと、これまたそうでもなく。時代やメディアによって求められるものも変化し。もっとも、人は文章の巧拙だけを期待しているわけじゃないんだよね。
この辺りの話は実はフェイクニュース問題とか、ネットにおける左右対立、分断とも関係あり。何を信じるか、何が好きかという話にもなり。
まあ、自戒を激しく込めて言うのだが、このようにライターが食えるかどうか問題というのを当事者、関係者たちが公言するというのは、正直にモノが言える時代になったといえるのか、みっともないといえるのか。ああ、こういう話を公言していた4、5年前くらいの僕はみっともなかったな。反省。
モテるためにバンドを始めた奴が世界平和を歌い人々を動かすかもしれないし、実力をもった人が暗黒面に落ちるかもしれないし、人生長いからわからんのだよ。
まずは健康に生き延びることが大切だ。その上で何を大切にするかも、ね。
私が大事にしているのは、常に自分らしくいること、考えたことを主張すること。一方、依頼された仕事はほぼ断らないこと。ギャラとか手段とかね。それこそ、新聞のコメントはノーチェック、生放送は発言時間が短い、ゆえに誤解を呼ぶとかそういう意見もわかるが、私はリスクをおかしてでも声を届ける
これは自分の原点。高1のときの学級日誌。その前から自分で毎日日記を書いていたけれど、これは初のブログみたいなもんで。日直がまわってくるたびノートに2~3ページ自分の意見を書くという。あの頃に比べると、読者、増えたなあ。 https://t.co/GJueoJ0Hq6
というわけで、つれづれなるままに書き綴ってきたが、プロ視点で言うと切磋琢磨しようぜって話と、ちょっとひいた視点で見てみようって話。
あ、中川さん、宮崎さんにもご協力頂いた、一橋ビジネスレビューに寄稿した拙稿、読んでね。もっとライター界隈で話題になってもいいのだが、反響少なめ(涙)
というわけで、読モライター問題は是非の問題じゃないような気がして。実力と売れるってまた違うし、一方で、売れているからって尊敬されているわけではないし。最初は実力が疑問視されていた作家なり、アーチストが本格派になったりするし。長い目で考えましょ。
編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2018年7月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。