軽減税率は「税金のサマータイム」

2018年08月18日 01:00

サマータイムには賛否両論というより反対論しか出てこないので、「まさか実現しないだろう」という楽観論が多いが、油断できない。同じように「海外では実施したが後悔している」制度が、来年実施される予定だ。消費税の軽減税率である。アゴラ研究所にも税務署から「よくわかる軽減税率制度」というパンフレットが来た。

軽減税率は2017年4月に消費税率を10%に引き上げる法律で決まったが、増税が再延期されて2019年10月になった。増税は今年の骨太方針で明記されたので、再々延期されなければ、軽減税率も実施される。対象は酒類・外食を除く飲食料品と、週2回以上発行される新聞である。

自民党の総裁選挙では、石破茂氏は軽減税率に慎重論を唱えているが、私も賛成だ。これは公明党が選挙対策で持ち出した話で、有志の提言も指摘するように、

軽減税率制度は、欧州等の先行実施している諸国の実情を実証分析しても、所得再分配効果を期待できない(低所得者対策にならない)、その実施に際しては多大な社会的コストを伴い国民生活の混乱を招きかねない、軽減税率の商品別採択を巡って利権政治が横行しがちである等の問題がある。

たとえばハンバーガーは店内で食うと「外食」だから消費税10%だが、「テイクアウト」だと8%の軽減税率が適用される。ではテイクアウトで買ったハンバーガーを店内で食ったらどうなるのか。こういうバカバカしい問題がたくさん出てくるが、その判断は基本的に「自主規制」だから、政治家と業界団体が毎年1兆円の財源を左右する。

ところが新聞は、この問題に沈黙している。その原因はもちろん、新聞が軽減対象になるからだ。新聞の定義は「政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する週2回以上発行されるもので、定期購読契約に基づくもの」となっているが、スポーツ新聞や競馬新聞はどうなるのだろうか。

軽減税率には所得分配を是正する効果はないが、マスコミを黙らせる効果は大きい。複数税率にすると、非生産的なシステム変更のコストが莫大になるのも、サマータイムと同じだ。そして安倍政権のポピュリズムの証拠を歴史に残す効果はあるだろう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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