「姥捨て山になる老人病院批判」に反響

2018年09月04日 06:00

延命治療を拒否なら生前に言う

「老人病院は寝たきり老人の姥捨て山」(8月30日)というタイトルでブログを書いたところ、多くのアクセスがあり、医師とおっしゃる方からのコメントも寄せられました。寝たきり老人になった時の最期の難しさを痛感し、傾聴すべき点もありました。ブログに接した方がコメントまでフォローすることは少ないでしょうから、続報として主張を紹介しましょう。

一般の方もFacebookなどにコメントを寄せてくれましたので、まずそれから。「母親は生前、死ぬ時はぽっくり逝きたいと願い、ぽっくり地蔵によくお参りしていました。脳卒中で倒れて入院。医師はそのことを理解し、無理な延命治療を避けたため、2か月ほどで安らかに亡くなった」。

藤掛病院(NHKニュースより:編集部)

ぽっくり地蔵にお参り

ぽっくり地蔵へのお参りを「本人は延命治療を希望していない」ことの証明であると、医師が理解した。ここがポイントです。「岐阜の田舎で開業医(内科)」の方も「大事なのは本人が元気なうちから家族に繰り返し、延命治療は絶対に希望しないと、いい続けておくべきだ」と、指摘します。

人間の命のことですから、いつ病に倒れ、意識を失うか分かりません。尊厳死協会に登録して、延命治療を拒否する意思表示をしておくのも、一つの方法です。最期の迎え方には多様なケースがありますので、ブログでは80歳代、90歳代の寝たきり老人のケースを想定しています。

一人暮らしの母親が脳出血で倒れ、救急車で搬送され、普通の病院に4,5か月、ついで老人病院に転院した方は、苦労されました。「東京から住所を移転して、母親の面倒をみるために、引っ越ししました。それ以前の4年、母親は認知症気味でした。その介護のための帰郷が月1回が2回、2回が3回」。認知症と脳出血の二つを抱え、大変でしたね。

「その経験からいうと、病を抱えた高齢者に対する病院のシステムこそ寝たきり老人を作る。普通の病院は患者を生かすのが仕事。それに対し、老人病院は生かさず殺さず、緩やかに死なせる場所と思う」。これが母親が亡くなるまでの4年間で感じた老人病院への感想です。

地方病の内科医(勤務医)は、「私の病院でも、延命を希望しない患者がいる。経口摂取できなくなっても、最低限の輸液しかしない。結局、脱水、電解質喪失で死に至る。ただし、このような状態になったら、患者には意識はなく、苦しみも訴えない」といいます。

点滴中止と熱中症の類似点

「安らかに逝った」と家族は満足するはずだと、この医師はいわれます。そういう意味では、岐阜の藤掛病院の熱中症による死亡(意図しない延命治療の中止)と、最低限の輸液の補給にとどめることによる死亡(意図した延命治療の中止)は「どこで線引きして考えるかの違いにしか過ぎない」と。

別の地方勤務医は「藤掛病院の事件で、警察が殺人容疑で捜査に入ったと始めは、伝えられた。終末期医療にたずさわる医師として、ある種の恐怖を感じた」と、いいます。延命治療を停止することの難しさは、医師の善意のはずが「未必の故意による殺人」と解釈されるケースがでてくることでしょう。

「点滴をすれば、患者は生き延びる。延命治療を続けないと、未必の故意による殺人だと、疑われる」、「面倒なことになるので、点滴による延命を続ける」、「皆が安らかな死を望むなら死は遠ざかり、その結果、寝たきり患者が増える」。医師側と患者側の願いにはすれ違いがありますね。

「岐阜の田舎の開業医」と言われる方は、「トラブルを防ぐには、本人が元気なうちに家族に無駄な延命治療は望まないと、繰り返しいっておくべきだ」と、助言します。「天寿を全うして亡くなれば、家族は何の悔いもなく受け入れられる。第三者(医師、病院)の不作為で寿命が縮んで亡くなったら、家族は受け入れられない」。そういう難しさがあるのでしょう。

「寝たきりにしないための医療の対応、医療の反省点」、「それでも寝たきり状態になってしまってからの医療」、「寝たきりでまだ意識がある状態、意識もなくなってしまった状態」、「延命治療に本人の意思の表明が行われている場合、それがなかった場合」など、ケースは様々です。どの段階、どの問題に対して意見を述べているのか、医師や病院に善意があるのかないのか、整理して考えることが大切だと思います。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2018年9月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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