AI研究開発の針路―理研シンポにて

理研AIPシンポ@丸の内。
AI研究本山の成果発表会。
松本紘理事長:元京大総長、杉山将センター長:東大教授、金出武雄特別顧問:カーネギーメロン教授、安西祐一郎JST理事長:元慶應塾長はじめAI研究を主導するみなさんがご登壇。

ぼくは2年前にAIPの紹介を書き、勝手応援団を名乗っていましたが、その後正式にここのコーディネーターを務めることになりまして、そのおしごとであります。

「理研のAI研究センターに期待を寄せております。」

理研松本紘理事長
AIPは汎用、目的、社会の3グループで研究を進めている。
理研は先端研究の拠点だが、身の回りの、国民に結びつくチャンネルが必要。
それを心得て進めたい。
日本橋に拠点を置く。技術、産業、生活にネットワークを張り巡らせたい。

杉山センター長
応用研究はGAFAが代表する規模勝負。
それらとは一線を画し、AIによる科学研究と社会課題の解決に注力する。
医療、モノづくり、防災、インフラなど。
汎用・基礎研究は個人勝負。数理に強い研究者による直球の原理勝負。
社会研究は、倫理、法など人文社会系の問題に対応する。
NEC、東芝、富士通とそれぞれ連携センターを設けるなど20社と共同研究を進めている。
40か国からインターンも受け入れる。
メンバーは475名。常勤88名、外国人71名。だがその増強が急務。

金出特別顧問
ピアス勧告による機械翻訳批判やミンスキー・パパートの単層パーセプトロン限界などの挫折をAI研究は克服・回帰してきた。
今後、現実の問題に立ち向かっていくべき。
自分の決定を説明できるAI、会議に参加貢献できるAIなど。
問題解決能力シェアリングが重要だ。

安西祐一郎先生
AIは民間主導で。
政府が重厚長大を引っ張った産業技術と異なり、国境を越えるオープンイノベーションを民間が自ら進むことを政府が助けるという構図。
第5期科学技術基本計画が「柔軟性」を重視しているのはその現れ。
理研、NICT、産総研、そして各々の大学の連携は難しい。
金出さんは基礎研究と無人走行など出口との両方を一人の中で連動させている。
理論の人と出口の人の統合が課題。AIPはそれを解決してほしい。
大学の人が一人で作ったものはオモチャにすぎない。
論文発表してもホメられて気持ちはいいが記憶には残らない。
企業の共同研究にしても、本気でマネジメントを入れないと成果は生まれない。

260名が参加する熱気の中、厳しい見方も示されました。
理研AIPはヨコに繋がりつつ外に開かれた場づくりを進め、基礎・応用・社会研究を進めます。どうぞよろしく。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2018年10月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。