理研のAI研究センターに期待を寄せております。

AIP:人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト。総務・文科・経産3省の連携でAIの研究開発と社会実装を推進しています。AIとIoT/ビッグデータの掛け算。70億円予算のうち30億円を理研AIPセンターに計上。政府は気合が入っています。

30億円以上に政府に気合が見込めるのは、理研AIPセンターのトップに42歳の杉山将東大教授をアサインしたこと。特別顧問としてカーネギーメロン金出武雄教授、NII喜連川所長、東大合原教授、ATR川人所長という超重鎮を配置、脇を固めて推進体制を整備しました。

85年、70歳だったMIT学長Jウィーズナーが42歳のNネグロポンテにMITメディアラボの所長を託した。それを彷彿させます。ネグロポンテは15年所長を続けました。日本はAI研究を杉山さんに15年委ねる、そういう気合が求められているのではないでしょうか。

深層学習、因果推論など革新的アルゴリズムの基盤技術を開発するとともに、その社会実装を進めることにしています。防災や医療などでのAI利用です。
AIが仕事を奪うといった不安が広がる状況で、分かりやすい社会実装により、AIの効用を示すことは重要な課題です。

しかしGoogle、Amazon、MSなどが数千億円規模の投資をする中、日本は政府予算が数十億円規模。このギャップを乗り越える戦略とは。
杉山センター長によれば、応用研究は予算規模勝負だが、基礎研究は個人勝負。個人研究者レベルだと日本もゲームチェンジが可能とのこと。なるほど。

では応用研究は?テーマを厳選して当たるとのこと。iPS細胞(山中伸弥教授)やものづくり(天野浩教授)など。加えて、課題先進国ニッポンの強みを活かして、ヘルスケア、防災などをプロジェクト化すること。正しい。

理研AIPは東京・日本橋に場を設け、200人の若手トップ級研究者体制を組む計画です。基盤技術と応用開発を網羅するとともに、社会研究にも力を入れます。理系の研究だけでなく、社会経済、倫理・哲学等のコミュニティを作るのはとても大切です。

ぼくはこの動きに役立ちたい。勝手に。そう思ってます。ぼくの社会人の原点は自動翻訳電話開発プロジェクトでATRを作ったことだし、MITではミンスキー一派とAIの冬季を過ごし、最近は知財本部でコンテンツとAIの議論をしていて、次の展望を描きたくなっていたところでした。

ぼくにできそうなことは、この分野が大事ですというプロモーション、わかりやすく発信すること。もう一つは日本の強みを活かすため、Pop & Techのコミュニティーを作り上げることかと。

日本はAIの利用大国になることが戦略でしょう。医療や防災という課題先進国としての利用も大事ですが、ポップカルチャー分野でゴリゴリ使う。教育分野でもゴリゴリ使う。役所でも使う。あれこれ広げていきたいです。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年4月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。