NHKがドラマで「フェイクニュース」を題材にする時代

2018年10月20日 06:00

アゴラの執筆陣やコアファンのかたの中には、テレビドラマに辛辣な物言いをされるかたが少なくない。特にNHKの大河ドラマといった歴史もの、あるいは特定の職業ものを題材にした作品に対して、そういう批評がよくあるが、NHKがこれまた随分とチャレンジングなテーマに挑むことになり、うるさ方の皆さんからまたあれこれ言われるかもしれない。北川景子さんがネットメディアの記者を演じ、「フェイクニュース」を題材にするというのだ。

NHKサイトより

NHKの土曜ドラマは、「新宿鮫」シリーズなど伝統的には大人好みの作風に定評がある。一度枠がなくなったことがあるが、2005年に復活した際の第1弾は「クライマーズ・ハイ」。横山秀夫さんが上毛新聞時代の体験をベースに、日航機墜落事故に直面した地元紙記者たちの活躍を描いた原作でおなじみ。のちに映画にもなったが、ドラマでは佐藤浩市さんが主人公の取材班デスクを演じた。

新聞社の社屋やセリフに出てくる業界用語の数々、はては事故の一報を知らせる共同通信の緊急速報アラームに至るまで、リアリティーのある作り込みに、当時読売にいた頃の私も同僚たちと唸ったのを覚えている。

そして翌年にヒットしたのが投資ファンドの世界を描いた「ハゲタカ」。ライブドア事件、村上ファンド事件に揺れた世相を反映し、経済ニュース好きのおじさんたちを中心に支持された。松田龍平さんが演じるベンチャー起業家が拳銃をぶっ放すシーンがあったりして、モデルの1人にされたであろう堀江貴文さんは憤慨していたが(笑)、のちにこのドラマのキャスト、スタッフがそのまま映画化。最近、テレビ朝日でもリメークされるなど、この枠で最大のヒット作だったことには間違いない。

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ほかにもシリーズでは、タイトルそのままの「監査法人」、国税査察官を描いた「チェイス〜国税査察官〜」といった地味な題材もあったし、外事担当の公安警察を描いた「外事警察」は映画にもなった。

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そうした流れを汲むわけなので、「いよいよフェイクニュースがNHKのドラマで取り上げられる時代になったのか」と、ネットメディア業界ではドラマ製作発表当時からワサワサしている(笑)。

ただ、大手のネットメディアの編集長たち業界の有名プレイヤーたちの何人かは、発表時に「すでに知っていた」という人が多い。というのも、今回のドラマ、プロデューサーの北野拓さんたちスタッフが業界の主だった面々には片っ端から取材をされていた。北川景子さんが演じる主人公の設定が新聞社から出向のネットメディア記者というあたり、おそらく朝日新聞子会社のハフポストあたりを意識しているのは間違いない。

そして、北野さんからは、とても光栄なことに零細メディアのアゴラの私にも共通の知人を通じてお声がけいただいた。北野さんはありがたいことに拙著も読まれていて、ネットメディアの世論形成のダイナミズムという、知る人ぞ知るディープな世界をよく研究されていた。

5月の半ばに、北野さん、メガホンをとる堀切園健太郎さんらの取材を受け、いろいろ話をさせていただき、ほかにも人を数人紹介もした(巻き込んだ皆さん、お忙しい中、ご協力いただき大感謝です…。)。なお堀切園監督は「ハゲタカ」でも演出をされた1人だ。

北野さんとは、取材後も、監修クレジットに入るほどのディープではないが、その後、数度やりとりもした。公式サイトのあらすじにまだ出ていないので、詳しくは控えるが、自分の領域のところは来週の後編にかかわるところなので、ほんのちょっとでも話したことが反映されていればうれしい。なお今夜9時からの前編は、インスタント食品への青虫混入にまつわるSNS投稿がすべての事件の発端となるところが描かれる。

それにしても「フェイクニュース」が題材だけに、既存メディアに不信感を持つネット民の皆さんから厳しい目にさらされるのは間違いない。今回ちょっとだけ私も関わった分、ドキドキでもある。

ただ、先述のうるさ方の皆さんにも言っておきたいのだが、リアリティーを追求しすぎ、設定があまりに複雑になるとドラマとしてのスピード感、面白みが欠けるのも事実だ。私もかつてアマチュアながら小説を書いたことがあるので、プロの作家さんのそういう編集力に驚嘆したことがあって、今回も実感している。

ひとつだけ個人的に後悔があるのは、キャスティングに私見を言う機会があったときのこと。

5月の時点では、まだ配役は未定で、誠に僭越ながら、主人公の「新聞記者出身の女性」にふさわしいイメージの女優さんを何人か挙げさせてもらった際に、なんで北川景子さんを言っておかなかったのだろうか!(汗)

後出しじゃんけんの言い訳のようになってしまうが、実はあの日、私の脳裏に北川さんのことはちらついていた。しかし、「大河ドラマの撮影で忙しいだろう」と勝手に自分の中でスケジューリングして控えてしまった。あのとき、名前を挙げておけば、「俺の推薦で北川景子が主演になった」と“アレオレ詐欺”的に威張れたのにもったいないことをした。

あぁ、まさに「DSP」。北川さんのご主人、DAIGOさんの言うところの「大失敗」である。お後がよろしウィッシュ!

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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