佐々淳行さんが亡くなられた。彼は警察官僚として、警備や公安畑を歩んできた。あの「連合赤軍あさま山荘事件」では、陣頭指揮をとっている。退官後は、中曽根康弘内閣で、初代の内閣安全保障室長を務めた。一貫して、この国の安全保障に心血を注いでこられた人物だ。
佐々さんには、「朝まで生テレビ!」に何度も出演していただいた。はっきりいって、安全保障については僕とは考え方が違う。けれど、だからこそ、何度も考えをぶつけあった。
日本の安全保障は極めていい加減で、矛盾がいっぱいある。戦後の日本は、その矛盾から目を逸らし、その矛盾を放置してきた。佐々さんは、その矛盾をなくし、誰でも納得できる、わかりやすい形にすべきだと主張していたのだ。
だが僕は、日本の防衛力強化には、強い抵抗がある。日本の自衛隊を「戦える軍隊」にするのは、問題だと考えていた。だから佐々さんとは、しばしばガチンコの激論になった。
しかしそれはそれで、とても気持ちのよい討論だった。佐々さんが、この国の安全保障を長年、真剣に考えており、ごまかしも駆け引きも一切ない人だったからだろう。
彼が亡くなられたことは、とても残念だ。世界情勢は、なお混沌としている。佐々さんに聞いてみたいことが、まだまだった。そして、もっと議論したかった。
編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2018年10月19日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。