障害者のために投票にICTを活用しよう

米国オハイオ州議会の広報担当が「What’s Being Done In Ohio To Help Voters With Disabilities?(障害を持つ投票者を助けるためにオハイオ州で進められていること)」をアップした。

視覚障害の投票者に提供するのが電子投票機である。音声で情報が提供されるため、第三者の支援なしに投票できるようになった。そもそも有権者には匿名での投票と、投票内容を秘密にできる権利がある。今までの代理投票はこの権利を侵害していたが、電子投票が変えた。記事には、視覚障害者が操作する電子投票機の写真が掲載されている。

自閉症の人々の投票についても記事は取り上げている。視覚と聴覚を同時に働かせることがむずかしい自閉症の人のために、啓発ビデオの代わりに、有権者登録から投票までステップを踏んで音声で案内する啓発資料を作ったそうだ。これらの人々には、投票日当日の混乱を避けるように期日前投票や郵便投票を勧めているという。

わが国では、総務省に組織された「投票環境の向上方策等に関する研究会」が2018年7月に報告を公表した。在外邦人にインターネット投票の導入という歓迎すべき提案があったが、障害者については、代理投票における投票の秘密の確保に資する取組を各選挙管理委員会に促していく、知的障害者の行動傾向や支援を必要とする事柄を投票事務従事者が理解して適切にサポートする程度である。

電子投票については「自書が困難な選挙人であっても、操作補助を受けることや音声案内を活用した投票により、自ら投票を行うことが可能であることから、タブレット端末などの汎用機を活用した電子投票を推進すべきとの議論もあった。」と書かれただけだ。

彼我の差はどこから来るのか。

オハイオ州の記事は、800万人を超える登録有権者のうち200万人が障害を持つとの推定を紹介している。有権者の1/4を投票から排除しては民主主義とは言えないから、ICTを活用しようというわけだ。

外務省「海外在留邦人数調査統計」によれば、2017年10月現在で在留邦人の総数は135万人で、海外に永住するものを除けば、いずれわが国に戻るつもりの邦人が87万人いるという。厚生労働省が4月に公表した「平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」には、「在宅の身体障害者手帳所持者(推計値)は428.7万人、療育手帳所持者(推計値)は96.2万人、精神障害者保健福祉手帳所持者(推計値)は84.1万人となり、いずれも前回調査から増加」と書かれている。しかし、わが国は圧倒的に数が多い障害者の投票機会を保障する方向に動き出していない。

中央官庁における障害者雇用率に間違いがあったことが最近問題になったが、選挙制度にも同様に障害者を「無視する」傾向があるとすれば、直ちに改善しなければならない。