アメリカの「好景気」はウォール街の中だけ

寿命延びぬ米国、薬物・自殺の影 17年平均78.6歳(日本経済新聞)

米国の平均寿命が延びていない。2017年は前の年より0.1歳下がって78.6歳となり、インフルエンザが大流行した1918年以来約1世紀ぶりに3年連続で延びなかった。薬物の過剰摂取や自殺による若い男性の死亡率上昇が要因。働き盛り世代の死者が増えると労働人口の減少など経済面にも影響が及ぶため、トランプ政権も対策強化を急いでいる。

Michael Fleshman/flikcr:編集部

アメリカの「好景気」というのはウォール街の中だけのことです。投資家、大企業の経営者、株屋が儲かれば「好景気」です。中産階級が労働階級に落ち、労働者階級が貧困層に落ちてフードスタンプをもらうようになったり、首を吊っても「好景気」だとメディアは報じてきました。

会社の経営が良くなっても、従業員の給料は増えない。下手すると減らされたり、解雇されます。そうすれば固定費用が減れば株価があがるからです。その値上がり分で自社株を買って更に株価を吊り上げると、経営者は投資家の覚えもめでたいし、自分の持っている株のストックオプションで儲かります。

だからこそ、米国民の多数派はメディアを信用しなくってきているし、トランプが大統領になり、サンダースが有力候補にもなったわけです。強欲資本主義も行き着くところに行くつくと、社会の大きな混乱を生むでしょう。フランスで起きたことも同様の理由でしょう。

そして我が国でも同じです。メディアが日本経済絶好調、長期の好景気だという安倍政権の大本営発表を検証もせずに垂れ流します。コメントする「経済の専門家」は実体経済に無知な学者か、株の乱高下で儲かる株屋のアナリストです。まともな分析になるはずがありません。

国の税金と借金と国民の収めた年金を株式市場に突っ込んで、株高を演出しており、国家予算とは別に、補正予算を第二の予算化して、GDPを膨らましています。ぼくは長年この補正の問題を指摘してきましたが、記者クラブメディアがこのことを書き始めたのは最近のことです。

実際問題として、安倍政権になってから社会保障費の負担も増えて個人の実質収入は減り続けており、GDPの6割を占める個人消費は冷え込んだままです。

ボーナスが増えたと言っても利益を出さなくていい公務員と、一部の大企業の社員だけです。その大企業も大してボーナスも出さずに内部留保していますが、それは下請けをいじめて儲けたりしたカネなわけで、そういう下請け企業がボーナスをはずむことはできないでしょう。

「景気判断」は株屋のためではなく、国民生活の実態を反映させたものにすべきです。

このままアメリカが強欲資本主義を是とするのであれば、中長期的にみて同国の没落を招くでしょうし、それは結果として中国を利することになります。

■本日の市ヶ谷の噂■
本年に起きた陸自のアパッチの事故で、実は同じ原因の事故が米国内で数件発生していたが、陸幕は無責任にもその事実を全く把握していなかった、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年12月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。