「スマートインクルージョン」も悪くないが「安全」が先

総務省と厚生労働省が共同して開催する「デジタル活用共生社会実現会議」の下に「ICTアクセシビリティ確保部会」が設けられた。僕は部会構成員として12月25日に開催された第1回会合に参加した。

デジタル活用共生社会実現会議が目指すのは「スマートインクルージョン」である。この造語だけではピンとこないが、具体的には「ICTを利活用して、年齢、性別、障害の有無、国籍等に関わりなく、誰もが多様な価値観やライフスタイルを持ちつつ、みんなで支え合いながら、豊かな人生を享受できる共生社会」を指すのだそうだ。

部会の任務は「日常生活等に資するIoT・AI等を活用した先端技術等の開発・実証の検討」と「情報アクセシビリティの確保等のための環境整備の検討」である。

興味深いプレゼンテーションがいくつか続き、その後に意見交換の時間が設けられたので、僕は次のように発言した。

ICTを活用して多様な人々が支え合い豊かな人生を享受するスマートインクルージョンに賛同する。しかし、そのような社会は安全があって初めて実現するという点を忘れないで欲しい。ICTは人々の安全を確保するのに重要な役割を果たすが、現状には多くの問題がある。

たとえば、地方公共団体が提供しているハザードマップの大半は画像PDFであって視覚障害者に情報は伝わらない。ハザードマップは危険度を色で表示しているが、色覚異常に配慮していない場合がある。仙台市ガスはもっとひどい。ガス臭い時に連絡する電話番号しか案内がない。メールフォームもない。これでは、聴覚や発話に障害のある人は緊急連絡ができない。いずれの例も命の危険をはらむ。

スマートインクルージョンの背景に安全の課題があることをしっかり認識したうえで、情報アクセシビリティの確保等のための環境・制度を考えるべきである。

次回は1月11日に開催の予定である。