QRコード決済は今年大ブレーク……しない?

2019年01月07日 06:00

QRコード決済については、昨年暮れのPayPayの総額100億円で20%ポイント還元キャンペーンに続いて、LINE Payが同じく20%ポイント還元キャンペーンを行い、さらに年初にはauペイが4月から楽天ペイやクイックペイが導入されている店舗約100万店でQRコード決済を開始するとの報道があった。

このほかにも最近は、d払い、オリガミペイ、ファミペイ、セブンペイなど様々な企業がQRコードやバーコード決済の市場に参入したり、参入を準備したりしている。さながら“QRコード決済戦国時代”の様相だ。それでは、今年はQRコード決済が大ブレークして、キャッシュレス社会に向かって大きな進展が見られるのだろうか。

私はそれにはまだ乗り越えるべきハードルがいくつかあると思っている。

そのひとつはスマホを操作する手間だ。キャッシュ(現金)とQRコード決済の対比をしてみよう。キャッシュは財布に入れておくと、いつでも残高が一目でわかり、そこにあるだけしか使えないので、使い過ぎを防ぐのが容易だ。また、キャッシュは支払いをする際は財布から取り出して店員に渡すだけの手間ですむ。

これに対してQRコード決済は、アプリを起動しないと残高はわからないし、支払いの際にもスマホにQRコード等を表示させてそれをお店に読み取ってもらったり、逆にお店のQRコードをスマホで読み取った上で購入金額を入力したりといった手間がかかる。さらに言えば、QRコード決済は事前にアプリをスマホにダウンロードした上で、クレジットカードや銀行口座に紐づける作業をしておかねばならないが、これがスマホになれている者でも結構面倒だ。そして、この手間を省くために設定作業を簡略化しすぎると、PayPay で起きたクレジットカードの不正利用などのセキュリティ上の問題が発生しやすくなってしまう。

なお、このアプリ操作の手間という点では、最近VISA、Master、JCB等のクレジットカード会社がNFCチップを搭載した非接触型のクレジットカードの利用拡大に努めているが、この非接触型のクレジットカードはお財布から取り出してお店の端末にかざすだけの手間で決済が終了するので、キャッシュと同様にQRコード決済の強力なライバルとなるだろう。

この手間をどうやって少なくするか、あるいは手間がかかってもそれを上回るメリットをQRコード決済に付与できるか、ここをよく考えないとQRコード決済事業者が期待しているような爆発的な普及は望めない。

また、キャッシュは、ロイヤルホストのキャッシュレス店のような特別な店以外では、日本中どこでも支払いに使えるのに対して、QRコード決済ができる店の数はまだ極めて少ない。上記の通り報道ではauペイは4月から約100万店でサービス開始とのことだが、クレジットカードはこれよりも一桁以上多く、JCB、VISA、Masterでは日本国内に1000万店を超える加盟店があると言われている。しかしそれでもなお、東京などの大都市圏を除き、地方では加盟店数が少なく、カード決済をすることに不自由さがある。

もちろんそれだからこそ、加盟店を一気に増やして、QRコード決済をどこでもできるようにしようというのだろうが、一気に100万店が1000万や2000万店になったりはしない。それは加盟店開拓のマンパワーに限界があるだけでなく、お店の側で積極的に加盟店になる理由が見つからないという問題があるからだ。

PayPayやLINE Payのキャンペーンに象徴されるように、これまでQRコード決済事業者は、ポイント還元を使って新規利用者を大量獲得することばかりに注力して、加盟店は手数料というミルクを搾り取るための牝牛としてしか見ていない。

中国でAlipayやWeChatPayがあれだけ広く使われるようになったのは、もちろん中国政府の後押しがあったことやスマホの普及が著しかったことがあるが、それらの決済サービスを利用する店舗側の手数料がほぼゼロだったことも大きな要因だ。AlipayやWeChatPayは、決済以外のところで収益を上げていて、手数料収入に依存しないビジネスモデルとなっている。

日本でも加盟店の手数料をできるだけ低くしなければ、加盟店の爆発的な拡大は見込めない。LINE Payは2021年7月末まで中小の加盟店の手数料をゼロにすることとしたが、2021年8月以降のことはよくわからない。

日本のQRコード決済事業者は、利用者へのポイント還元を抑えて、加盟店手数料をできるだけ引き下げ、さらに一定以上QRコード決済が行われた加盟店にはボーナスを支払うといったことを考えるべきだ。こうすれば新規に加盟店になる店が増えるだろうし、一旦加盟店になれば、このボーナスを目当てに加盟店が積極的にその顧客に対してQRコード決済を勧誘することも考えられる。

QRコード決済の普及のためには、QRコード決済事業者だけでなく、加盟店と利用者の3者にそれぞれメリットが感じられる仕組みにしていくことが必要ではないだろうか。

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有地 浩
株式会社日本決済情報センター顧問、人間経済科学研究所 代表パートナー(財務省OB)

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