文在寅は誰にケンカを売っているのか?

宇山 卓栄

日韓議員連盟はいったい何をやっているのか

今、日本の国益という観点から見て、韓国内の保守派との連携は欠かせない。つまり、文在寅政権に虐げられている最大野党・自由韓国党をはじめとする保守派との連携だ。反文在寅を掲げる彼らに頑張ってもらって、文政権を追い詰める、このことは日本の国益にかなう。

逆に言えば、韓国の保守派が強くならない限り、文在寅政権はさらに無法をエスカレートさせる。韓国に対する我々の日本人の怒りは頂点に達している。韓国を全否定する気持ちはわかるが、日本にとって、利用すべきところは利用すべきである。

11日、日韓議員連盟会長の額賀福志郎元財務相らは来日中の姜昌一(カン・チャンイル)・同議連会長らと会食し、「互いに力を合わせ、この難局を乗り切る」ように要請したという。今、姜氏のような左派を相手にしたところで百害あって一利なしだ。話し合うべき相手が違う。

日韓議員連盟の議員たちは本来やるべき保守派との連携や話し合いをほとんどやっていない。

韓国保守派の日本批判

しかし、自由韓国党などの保守派にも責任がある。彼らもまた、左派同様に、日本を敵視し、公然と安倍政権批判をしている。

羅卿瑗氏(Wikipediaより:編集部)

2018年11月3日、自由韓国党の中で、最も発信力があり、影響力もある羅卿ウォン(ナ・ギョンウォン)院内代表(「美し過ぎる議員」として有名)は徴用工判決問題で、「歴史的事実を否定する安倍首相の発言は稚拙極まりない」と日本の対応を痛烈に批判した。

また、自由韓国党の広報は1月6日、レーダー照射問題に関し、「安倍首相は防衛省の反対にも関わらず、映像公開を指示し、移民政策などで急落している支持率を挽回するために韓日葛藤を利用している」と指摘した。

韓国の保守派は自分たちの置かれている深刻な状況をわかっていない。今、日本を批判すれば、敵(文政権)を利することになる。羅議員や金秉準(キム・ビョンジュン)・非常対策委員長(自由韓国党党首)をはじめ自由韓国党の有力議員の多くは筋金入りの反日家である。しかし、彼らは「敵の敵は味方」ということをよく認識して、反日路線をしばらく脇に置くということの戦略の有効性について考えるべきだ。

自由韓国党などの保守派がしっかりしていないから、左派勢力に政権を乗っ取られ、国を危機に晒しているのだ。親朴派と反朴派の不毛な内部抗争なども敵を利するだけである。

仮に、韓国の保守派が日本と連携して、韓国で進行している左派革命の脅威を国際社会にアピールしていけば、相当インパクトがある。日韓議員連盟というのはこういう手を打つためにこそある。

日本に魂を売った保守派という印象操作

韓国大統領府FBより:編集部

文大統領は10日、約30分間の「新年の辞」の中で、北朝鮮のことに熱心に言及したが、日韓関係について全く触れなかった。

その後の2時間に及ぶ記者会見で、日本メディアの質問で、ようやく文大統領は日韓関係に触れ、「これ(元徴用工問題)は、韓国政府が作り出した問題ではない。日本政府はこの問題に対して、もっと謙虚にならないといけない。この問題を日本の政治家や指導者が政治的に争点化し、論争を種にして拡散しているのは、賢明な態度ではない」と言及した。

文大統領も政権内部の人間も、実は日本のことにほとんど関心がない。文政権が対日政策に関して、何らかの具体的な指針を示したことはない。彼らの関心は専ら北朝鮮との赤化統一をどう進めるかということに集中している。

加えて、韓国国民も従来の反日パフォーマンスには、ほとんど反応を示さなくなっている。韓国国民はこの手法には飽きてしまっているのだ。文政権もこの手法が支持率上昇のネタにならないことをわかっている。文政権は前政権から続く、「保守VS左派」の国内戦争を制しなければならない。徴用工訴訟判決などは、この戦争を有利に導くために引き合いに出されたダシである。

朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領のような韓国を創建した父祖たちは親日派であった。親日派の系譜にある保守勢力を、文大統領は「積弊」と呼んで処断し、罪人扱いにする。徴用工問題や慰安婦問題を持ち出し、この問題で日本と妥協した保守派がいかに悪辣であるかが国民に示される。虐げられた被害者を見棄て、日本に魂を売った保守派、人権を蹂躙した血も涙もない保守派というイメージが浮き彫りにされて、彼らへの憎悪が国民に植え付けられ、保守派の政治生命が事実上、抹殺されていく。

左派革命政権と戦う共通の利害

文大統領の最終政治目標は北朝鮮主導の赤化統一である。自ら、自国の正当性を否定して、自国を丸ごと、北朝鮮に差し出す。これこそが北朝鮮の工作によって生み出された文大統領の使命である。

赤化統一を実現するためには、韓国は自国民に、北朝鮮の法的かつ歴史的優位性を認識させるとともに、自国の正当性を否定しなければならない。しかし、いくら文政権でも、それを露骨に韓国国内に向かって言うことはできない。そこで、「日本=犯罪者」という方便を使って、外堀から埋めていく作戦をとっている。

実際に、文政権のこうした目論見に沿って、徴用工訴訟判決をはじめとする一連の無法が行われている。
文在寅政権は日本にケンカを売っているように見えるが、彼らが本当にケンカを売っている相手は、実は日本ではない。本当の相手とは文政権に敵対している韓国国内の保守勢力である。

自由韓国党の羅卿ウォン議員ら保守派議員は10日の文大統領の記者会見について、経済問題のみを批判し、日韓関係については何も言わなかった。いや、言えないのである。なぜならば、文政権の打ち出す「日本=犯罪者」という方便が効いており、この問題で保守派も同調する以外にないからだ。

その苦境は理解できるが、自由韓国党が自ら率先して、日本批判をするのは愚かなことだ。日本批判で支持を稼げると思っているならば、大間違いである。むしろ、保守派がそれをやればやるほど、韓国国民の失笑を買うだけだ。

保守派は経済で追い詰めていくつもりであろうが、それだけで文政権の屋台骨を崩せないだろう。彼ら保守派にとっても、我々日本にとっても、文在寅・左派革命政権にどう戦うかということについて、共通の利害がある。両者ともに、こうした戦略観が決定的に欠けており、文政権を利するばかりの状況に陥っている。そして、今、最も意気揚々と喜んでいるのは金正恩委員長であろう。

朝鮮属国史 中国が支配した2000年 (扶桑社新書)
宇山 卓栄
扶桑社
2018-11-02