ICTアクセシビリティ確保部会中間報告を俯瞰する

総務省と厚生労働省が共宰する『デジタル活用共生社会実現会議』『ICTアクセシビリティ確保部会』の中間報告案について1月21日に議論した。今まで検討してきた事項間のつながりがわかりにくいという意見が出たので、僕が俯瞰図を提示した。

障害者・高齢者など多様な人が活躍する共生社会は、ICT(デジタル)をどう活用すれば実現できるだろうか。これが会議全体の検討事項である。第2回部会では、家・移動・仕事・エンタメがデジタルで変容し、障害者等を包摂していく未来像が発表された。。

障害を持つ当事者や家族等を中心に据えて課題を抽出し、解決していく姿勢が最も重要である。そこで図の中心に「障害を持つ当事者等」と書いた。周辺には、「家族」「支援者」「専門職」「公共機関」等が玉ねぎの輪切りのように同心円状に取り囲む。

障害者の困りごとの一つが、どんな支援技術(音声認識アプリ、画像や文字の拡大鏡、手の震えで誤動作しないポインタなど)を利用すればよいかわからないことである。そこで求められるのがe-AT(ICT支援技術)の導入支援である。

e-ATも利用して、障害者は特別支援学校から高等教育まで様々なICTスキルを学んでいく。それは社会生活に必須のスキルであると同時に、ICT機器やサービスを開発する企業で就労する際に必要な能力でもある。後者では開発者のニーズとのマッチングが求められる。

上の施策を通じて障害者が多く就労するようになると、公共機関でも民間でも「障害者参加型開発」が可能になる。米国連邦政府での所得申告システム開発に視覚障害者が従事してアクセシビリティに対応している、と以前の部会で僕は話したことがある。わが国でも同様の方法が取れるようにしたい。

高齢者向けの電子ルーペ(東京都障害者IT地域支援センターHPより:編集部)

しかし、機器サービスの開発一つずつにあらゆる種類の障害者が参加するのは不可能である。そこで必要になるのが、個々の障害当事者等がどのようなニーズを持っているか一覧できるデータベースである。これをエビデンスDBと呼ぶ。

開発された機器サービス個々はどんな点に配慮しているわかれば、障害者は選択が容易になる。「利用可能なICT選択DB」は個々の障害者自身が利用可能な機器サービスを選択する際に利用される。

二つのデータベースは、開発に協力するモニター人材のDBも加えて、官民が共同するコンソーシアムで一括して管理される。

開発者はエビデンスDBとモニター人材DBを活用して機器サービスを開発し、開発した機器サービスの情報をICT選択DBに提供する。障害者は自らのニーズをエビデンスDBに入力し、ICT選択DBで自分が使える機器サービスを選択する。モニター人材DBに登録すれば就労のチャンスを得る。

これら多様な施策が絵に描いた餅に終わらないためには強制力が必要になる。それが前回も僕が提案した、公共調達での情報アクセシビリティ対応を義務化する法制度整備である。

ICTアクセシビリティ確保部会がここで説明した方向に進んでいくことを強く期待する。