総務省と厚生労働省が共宰する『デジタル活用共生社会実現会議』『ICTアクセシビリティ確保部会』が今日も開催された。僕も発表の機会を得たので、「ICT機器・サービスの公共調達ではアクセシビリティ対応を義務化すべきである」と、公共調達法の制定を求めた。
米国には、連邦政府が調達するICT機器・サービスでのアクセシビリティ対応を義務化する『リハビリテーション法』(508条)がある。公共調達に利用する具体的な技術基準は『508条技術基準』として定められ、2017年版が最新である。
欧州には、公共調達全般でアクセシビリティ対応を求める欧州指令2014/24/EUと、公共ウェブサイトでの対応を求める欧州指令2016/2102がある。技術基準は「EN 301 549」として2015年に制定されている。
なぜ欧米では公共調達のためにわざわざ法制を用意したのだろうか。国民は企業を選択できるが公共機関は選択できない。公共調達での対応の有無は多くの国民に影響する、というのが法制の根拠である。また、アクセシビリティ対応には公共機関での障害者雇用を促進する効果もある。公共調達の市場規模は大きく(OECD統計では、日本は2016年にGDP比39%)、それに誘引されて企業がアクセシビリティ対応に動くため、 民生市場にもプラスの影響が出る。
対応を義務化する理由は、強制しなければ無視する公共機関が出るためだ。総務省は公共ウェブサイトのJIS準拠を求めたが、視覚を用いないと情報が取得できないハザードマップが地方公共団体サイトに数多く残存する等、課題が山積している。任意に準拠を求めるのには限界があり、状況打破には強制規定が必要である。実際、米国のリハビリテーション法には、苦情申し立てとそれに続く民事訴訟が規定されている。
公共調達でのICTアクセシビリティ義務化(公共調達法の制定)は共生社会を作り出すために不可欠な政策である。