「Think different=他とは違うことを考えよう!」は、アップルコンピュータの広告キャンペーンのスローガンである。このスローガンは、テレビコマーシャルのほか、印刷広告や個別のアップル製品のテレビ広告などでも使用されている。
今回は、『なぜ崎陽軒のシウマイは冷たいのに売れるのか?』(みらいパブリッシング)を紹介したい。著者は、マーケターの中山マコトさん。主な著書に『「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本』(KADOKAWA・中経出版)、『フリーで働く!と決めたら読む本』(日本経済新聞出版社)など、4o冊を超える。
崎陽軒のシウマイは発想の転換で生まれたヒット商品だと中山さんは答える。崎陽軒のシウマイは1928年に発売がスタートした。現代と違って、弁当は冷たくて当たり前の時代。本来、中華料理の点心は湯気が立ち上る蒸篭で供されるくらい、できたての熱々がおいしい料理である。弁当には不向きと考える人が多かったに違いない。
「もし、そこで『弁当のシウマイが冷たいのは当たり前!と割り切っていたら今日の崎陽軒はなかったでしょう』。当時の店主は「弁当が冷たいのは仕方ない。それならば、『冷たいからこそおいしいと感じるシウマイを作ろう』とレシピ開発に情熱を注ぎ、ホタテ貝柱から出たスープを混ぜ込むなど独自のシウマイづくりに成功します。すさまじい試行錯誤を重ねた結果、『かつてなかった新たな価値を持った商品』が登場したわけです。一人の男のこだわりや熱意が、新しい市場を作ったのです。」(中山さん)
「ここでひとつ、あなたの周囲でニュースなどに取り上げられる『うまく行っている商品、会社、店、サービス』などを改めて見回してみてください。多かれ少なかれ、かつてなかったものへのチャレンジの禁で生まれたものばかりではないでしょうか。」(同)
こうした例は、ちょっと見まわすだけでもいくつかある。まさに金の鉱脈。掘ってみなければわからない隠れ資産。それは、すぐに手に入れられる成功でもある。
「こういったチャンスは世の中にいっぱいあるはずなのですが、見過ごされているように私は思います。『これが当たり前』だと割り切ったり、あきらめたりすれば、扉は開かれません。物事を上から見たり下から見たり斜めから覗きこんだりと、視点を変えていきましょう。その発想の転換がヒット商品を生み出すためには必要です。」(中山さん)
本書は、崎陽軒のシウマイをケースとして、多くの「Think different」な例をピックアップした、「アイデアを見つけるための一冊」である。なかなか気づかない発想の転換について、著者が事例をひも解き解説する。
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※新刊情報(筆者11冊目の著書)
『即効!成果が上がる文章の技術』(明日香出版社)
[本書の評価]★★★(72点)
【評価のレべリング】※標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★ 「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★ 「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★ 「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
星無し 「レベル0!読むに値しない本」50点未満