国がいま財政でやっていることを江戸時代に例えたら?

藤巻 健史

『風の果て』(藤沢周平)を読んでいたら

「何もやらんで借金で喰っておっては、不安でたまらぬという気持ちだろう」

との文章。江戸時代の藩の執政も借金を憂慮するのに30年間も30数兆円の借金を重ねている(それも税収+税外収入の半分にものぼる借金)のに「財政は大丈夫。さらなる財政出動を」という論者の気が知れない。

Wikipediaより:編集部

今、国がやっていることは米生産量が変わらないのに藩札の増刷をしているのと同じ。もしくは貨幣改鋳と同じ。財政危機に対する手段が限られていることやその結果が何をもたらすかは藩の時代でも今でも同じ。生産量を上げ収入を増やすか、増税しかない。

ここまで巨大借金がたまった以上、(メタンハイドレードが発見される等巨大収入が突然見つからない限り)残念ながら大増税しか手法はないだろう。財政楽観論が跋扈している現在、消費税とかその他の過激な大増税は無理だろうし、年金・健康保険の大幅削減などの超過激歳出カットも国民は受け入れないだろうからだ。借金が小さい時には温和な対処方法があったが、世界最大の大借金国(対GDP比)になった現在では過激な対策しか残されていない。

この状態では見えない形で、かつ国民の反対運動が起こらない形での大増税で財政再建をこっそりと果たそうと国は考えていると思われる。実際、政府・日銀は「異次元の量的緩和」で、その方向に舵を取っている。量的緩和には出口がないがゆえにハイパーインフレを引き起こすことを歴史は証明している。

だから私は、それに備え、ドルや仮想通貨の購入で自分で自分の身を守るべしと言っている。

見えない形、国民の反対運動がおこりにくい方法と言うのはハイパーインフレという大増税だ。インフレは経済学ではインフレ税という。債権者(預金などの債権を持つ国民)から債務者(日本最大の債務者は国)への富の実質的移行であるインフレは、国民から国への富の移行という意味で税金と同じなのだ。

(例:タクシー初乗り100万円のインフレが来ると1000万円の借金をしている個人タクシーの運転手(債務者)は10日お客さんを載せて1日で借金を返せる。ラッキーだ。一方、汗水たらして10年間で1000万円貯めた人(債権者)は10回タクシーに乗ると預金はパー。ガックリだ。その意味でインフレとは債権者から債務者への実質的富の移行である。


編集部より:この記事は、経済評論家、参議院議員の藤巻健史氏(比例、日本維新の会)のFacebook 2019年1月23日の記事を転載させていただきました。転載を快諾された藤巻氏に心より御礼申し上げます。