社会主義は帰ってくるのか

2020年に行われるアメリカの大統領選挙に、バーニー・サンダース上院議員が出馬を表明した。彼は2016年の大統領選挙で、ヒラリー・クリントン上院議員と最後まで民主党の候補を争ったことで知られる。彼の掲げる政策は、国民皆保険、全米最低賃金15ドル、公立学校の無償化など、巨額の財源を必要とする「大きな政府」である。

サンダースはみずから「民主社会主義者」と名乗り、民主党左派に大きな支持を集めている。社会主義は20世紀に崩壊し、過去のものになったと思われているが、サンダースを支持するのは、冷戦の終了後に生まれた若者だ。時代は一めぐりして、社会主義の時代がやってくるのだろうか。

財源の不明な「グリーン・ニューディール」

サンダースの選挙運動の中心になっているのが、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員である。昨年(2018年)初当選したばかりでまだ29歳だが、彼女も民主社会主義者を名乗っている。

彼女は「グリーン・ニューディール」(GND)という大胆なエネルギー政策を提案して注目を集めた。これは「今後10年以内に全米のエネルギーを100%再生可能エネルギーに変える」という決議案で、ベーシック・インカム(すべての人に定額の所得を保障する)や国民皆保険などの「格差是正計画」も入っている。

この決議案には法的拘束力はないが、大統領候補に名乗りを上げた政治家のうち6人がこの決議案に署名した。こういう突飛な案が議会で議論される背景には、アメリカの格差が拡大している状況がある。アメリカでは所得の20%が人口の1%の富裕層に集中し、最貧層との格差が大きな社会問題になっている。

10年で全米の火力発電所や原子力発電所をすべて廃止して再エネに変えるには、年間3兆ドル(330兆円)以上のコストがかかるといわれる。ベーシック・インカムにも同じぐらいの財源が必要で、GNDのコストは連邦政府の予算をはるかに上回る。

その財源はどうするのだろうか。サンダースは金持ちの資産に「富裕税」をかけると主張し、オカシオ=コルテスは所得税の最高税率を70%に引き上げるというが、そんな大増税が簡単にできるとは思えない。そのとき財源はどうするのか。

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