中国の肝、「融資平台」にどう立ち向かうか、注目の全人代

タイトルを見て何のことを言っているのかさっぱりわからん、とご指摘を受けるかもしれません。なるべく平易に書かせていただきますが、中国経済はどうなるのか、注目の全人代がいよいよ始まるなかでこれを知っておくと今の中国を知る理解度が深まるかもしれません。池上彰風ですかね。

全人代(正式には全国人民代表大会)は日本でいう国会に当たります。これが3月5日に開幕し、約10日続く予定です。今年、注目されるのはアメリカとの激しい通商交渉を通じて実務ベースで貿易通商協定案がほぼできたこと受け、全人代で様々な対策と法律案が提示されるとみています。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

中国の経済成長は徐々に高度を下げる形をとっており、今年は6.0-6.5%という目標(日経)になるのではと見られています。2018年成長率は6.6%でしたが、10-12月成長率が6.4%で当初目標の6.5%を下回ったこともあり、更に下方修正してくる可能性は確かにあるでしょう。ただ、個人的には実態に即していない中国統計をより実数に近いものにする調整を何年もかけて行っているのだとみています。

一方でポジティブな話をすると18年10-12月の景気低迷は中国だけではなく、地球規模で起きたものでした。幸いにして年明けからは表面上、回復に向かっています。仮に短期の景気調整で終わったことが確認でき、米中貿易協定が近いうちに締結されるならしばし、安どの期間があるとみています。つまり、中国発の「春の足音」になります。事実、NYに上場する中国株は結構回復しており、アリババ、京東などのパフォーマンスは2月はトップクラスでありました。株価が先行指標だとすればこれは良い兆候でしょう。

ただ、私は再三指摘している通り、根本的には中国の経済運営は極めて難しいところにきているとみています。それは地方の問題であります。中国の地方政府は債券発行による資金調達の道が基本的に閉ざされています。基本的というのはインフラ整備に使途を限った特別地方債《専項債》だけは認めており、これが2018年発行枠として1.35兆元ありました。

地方政府による債券発行制限理由は中央の財政管理ができなくなるからです。そのため、抜け道として地方政府が絡む民間会社を作り、そこが高利回りの理財商品を社債のような形で一般に売却、利回りに目がくらむ人たちがそこにお金を預けるという仕組みがごく普通に機能しています。これが今日のタイトルにある「融資平台」というものです。

この融資平台、残高はHSBCの調べで500兆円あるとされています。問題はどうやって高利回りの利払いを行っているのか、であります。住宅ももう売れません。とすれば新たに土地を切り売りして利払い資金に充てる手法をとっているのでしょうか?

一般に融資平台は潰れない、利払いの不履行はされないと信じられています。また社債の格付けも不思議と高いのです。そんな中、昨年の新疆ウィグルの融資平台、および先日の青海省投資集団では実質利払い不履行になり、「すわ、融資平台、デフォルトか」と話題になったのですが、なぜかギリギリ回避できています。つまり実質デフォルトだったのですが、記録上はまだないのです。

中央政府は融資平台は民間会社の「社債」と考えており、中央、地方それぞれの政府の債務には計上されません。これがこの仕組みのミソであります。西側世界の公認会計士が見たら絶対に認めない処理でしょう。こういうのを「タコ配」というのですが、もう何十年も聞かなかった言葉です。

全人代ではアメリカとの取引を踏まえた国内法整備、および内需拡大の景気刺激策を必ず打ち出してくるでしょう。また融資平台にいつまでも中央政府が知らぬふりをするわけにもいかないと思います。一方で上述の特別地方債は発行枠を6割ぐらい増やし、インフラ整備という名の活性化を行うのではないか、と目されています。

日本でいう建設国債のようなもので、これで国内経済の刺激をするというスタイルはいまだオールドエコノミーを進めなくてはいけない中国の苦悩が見て取れます。個人的には都市層と農民層の実質的差別化の撤廃をもって全国的な経済活性化を図るべきと思いますが、多分、中央政府はそれを恐れているようにも見えます。こうなると共産党一党主義を貫くのか、経済立て直しを図るのか、二者択一の選択をしなくてはいけない時期も案外遠くない気もします。

全人代から見える中国の経済運営方針はそんな意味でも将来を占う大きな意味がありそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年3月4日の記事より転載させていただきました。