柴山文部科学大臣が小中高等学校への携帯電話・スマホの持ち込みついて従来の方針を見直す方針を表明して以来、オールドメディアを中心に反対の論説が数多く掲載されている。
読売新聞は2月24日の社説で「授業中の使用や盗難などのトラブルをどう防ぐか。SNSを介したいじめを助長しないのか。懸念は尽きない」ので『学校にスマホ 拙速な解禁の弊害を直視せよ』と書いた。
信濃毎日新聞2月21日の社説も「急増する子どもたちのネット依存、会員制交流サイト(SNS)を通じた犯罪被害やいじめを助長することにならないだろうか。家庭の経済事情で携帯を持てない子もいよう」から『学校とスマホ 持ち込み禁止特前に』に考えるべきことがあると主張した。新潟日報もほぼ同じ理由で『スマホ持ち込み 教育への影響考え慎重に』と3月2日の社説に書いた。毎日新聞は大臣による方針表明以前の1月11日に社説を掲載し『学校へのスマホ携帯 副作用の議論が足りない』とした。
こんな「情報弱者」丸出しの意見しか出せないのは、オールドメディアが情報社会の進展についていけないからだ。
内閣府の2017年度調査によれば、携帯電話・スマホ合計の所有率は小学生55.5%、中学生66.7%、高校生97.1%で、中高生では大半がスマホだ。オールドメディアは知らないだろうが、中高生は学校にスマホを持ち込んでいる。教員の前で使わないだけだ。
ネットには新鮮で膨大な情報があふれている。その中から的確に情報を抽出し利用したり、新しい情報を発信したりするのが情報社会に生きる人々の姿である。情報の中にはフェイクもあるから引っ掛からないようにしなければならないし、自らフェイクを発信するのも避けるべきだ。自らのプライバシーをさらしたり、他人を傷つけたりするのはもってのほかだ。子供たちに教えなければならないのは、こんなネットとの付き合い方(リテラシー)だ。子供がSNSで問題行動を起こす原因の一つは、ネットとの付き合い方を教えない学校にある。
貧困家庭の子供には学校でスマホを貸せばよい。自分のスマホを使う子どもと一緒に教室で小惑星探査機「はやぶさ2」から送られてきた画像を楽しめば、宇宙への夢が広がるかもしれない。学校での授業に自分のスマホを持ち込ませることを「Bring Your Own Device」といい、諸外国では当たり前である。
BYODであれば学校所有のスマホやPCを一律に使わせるよりも予算は削減でき、余った予算は貧困家庭の子供の教育に活用できる。それを「家庭の経済事情で携帯を持てない子もいよう」と妨害すれば、貧困家庭の子供がネットに触れる機会は奪われる。オールドメディアはネットを通じての情報収集が苦手で、世界の情勢に通じていない。
小中学校へのスマホ持ち込みは緊急時の連絡用だけのためではない。授業の中で使うことでネットの利便と問題点がわかれば、子供たちは情報社会で生きていく準備ができる。