職員に売られ始めた小池知事:産経「市場民営化」特報に見えるもの(追記あり)

2019年03月16日 11:30

東京都議会の崩壊劇は、さすがに地上波テレビでも取り上げられてきた。そして、アゴラに寄稿している都議会議員をはじめ、ネットメディアが既存メディアより都政に積極的な姿勢は健在だ。AmebaTV「AbemaPrime」では昨晩、宇佐美典也氏と伊藤ゆう都議が直接対決し、非常に白熱した舌戦を繰り広げた。

番組全編の録画はこちら → AbemaPrime 築地市場の行方は?宇佐美典也VS都民ファ伊藤ゆうが公開討論
※リンク先は16日22時まで無料視聴可

そして、昨晩22時、この2人の議論がちょうど終わる頃、産経新聞が非常に興味深いスクープをネットで配信した。朝刊の締め切り前に特ダネを出すのは新聞業界としては異例。簡単には他社が入手できない証拠を掴んだ絶大な自信があるからだ。

市場民営化、都が言及 「都民」へ改革の必要性強調(産経新聞)

記事中の小池知事の写真は昨日の定例会見のもので、見出しも極めて平凡なものだから、うっかりすると知事会見を報じた公知情報の報道かと勘違いしてしまいそうだが、市場問題を巡って都の担当者と、都民ファーストの都議がインナーの意見交換の場を持ったようだ。その際のやり取りで都の担当者から民営化も視野に入れた話が出たのだという。

ぱくたそ、都知事公式インスタより

虚偽答弁?職員が告発した市場民営化の検討

民営化の是非は今回は書かないが、問題は、意見交換会翌日の都議会本会議で市場担当のトップである中央卸売市場長(村松明典氏)が民営化を検討している事実を否定する答弁をしていることだ。

つまり、もし意見交換会で都の担当者が「民営化など、腹づもりとしてはその辺りまで考える」と述べたことが事実であれば、答弁との齟齬があることになる。場合によっては産経の取材に応じている中堅都議(野党会派?)のコメントにあるように、「村松市場長の答弁が虚偽に当たる可能性」も出てくる。

民営化問題の行方は、来週以降の都議会やメディアの追及を注視しておきたいが、私が注目したのは産経がこの記事を書く根拠として「意見交換会でのやりとりを再現した都側作成のメモ」を独自入手していることだ。議会答弁との齟齬を問題視する都庁職員の誰かが産経新聞に渡したのだ。「公益通報」的な意識で社会的告発に踏み切ったのだろう。

行政側のメモがメディアに流出し、政治側の動きを告発するように仕向けていくのは、加計学園問題を彷彿とさせる。一連の問題では、文科省や大阪の特捜部、愛媛県などで内部情報を知る現場の行政職員が、安倍政権を見限ろうとして「告発」しようとする意図が見え隠れしていた。

もちろん、流出させる側の意図に乗った報道に対して慎重に判断する姿勢が必要だ。昨年4月、朝日新聞が「面会記録に『首相案件』」の記事を書く騒ぎがあった時、私は「首相案件」であること自体には違法性はないと指摘したが、問題は出てきた中身の違法性なり、政治的道義性なり、社会的妥当性に照らしてどうかだ。その中身を都議会ではもちろん、メディアや外部の有識者は客観的な立場から検証するべきであることが前提だろう。

職員も知事離れ  国政自民にますます擦り寄る小池

しかし、中身にかかわらず、産経新聞の「告発」記事の背景では確たることがある。記者に内部文書を渡すことは非常に危険だ。左遷どころか、場合によっては職を失うリスクを取ってまで産経の記者にメモを手渡した職員が出てきたことの方が、いまの小池氏の求心力低下、職員の小池知事離れを象徴する事態なのではないか。

おそらく午後には早川さんあたりが「この程度で小池さんの足元は揺るがない。大丈夫ですよー。」という擁護記事を書いてくるのだろうが、歴代の都道府県知事で思わぬ形の不祥事でつまづいた人のケースによくあるのは、職員による有形無形の造反だ。

議院内閣制の国政と違い、二元代表制の地方行政のトップは、行政サイドで二人三脚できる政治家がいないので、職員を敵に回すと完全に孤立してしまう(副知事や特別秘書に政治家経験者 or 政治家的な人物を配置するのは制度内でなんとか補完、睨みを効かせる意味もある)。

自民党サイト、官邸サイトより

小池知事も庁舎内の空気の変化を悟っているのだろうか。ますます自民党本部への擦り寄りをしている。

昨晩、まさにアベプラや産経の記事が流れていた頃、二階幹事長と会食。しかも同じ店に同時刻、安倍首相もいたというから、憶測を呼んでいる。

小池氏と二階氏が会食 同じ場所滞在の首相と接触か(日刊スポーツ)

安倍首相に会ったのかはともかく、都知事選に向けた政治的立ち回りについて二階氏と対策を練っていた可能性は高い。小池氏、自民党本部、都議会自民党(自民党都連)、そして都庁内部も含めて、それぞれの思惑が複雑に錯綜している。情報戦は今後も激しくなっていきそうだ。

(追記19:00)本記事に関する私のツイートに都民ファの鈴木邦和都議が「両者は矛盾せず、虚偽答弁には当たらないと思います」と反論。さらにメモの流出経路についてその次のツイートでこう述べている。

その中で「流出ルートが職員とは限らない」と指摘してきた(なお名前のあがった川松都議でない模様)。確かに職員から直接記者に渡したとは限らず、内部メモが間接的に誰かを通じて産経記者に渡った可能性は考えられる。正確な流出経路についての答え合わせで、もしかしたら私の見立ては間違っているかもしれない。しかし、それであっても職員が安易に外部にメモを渡したのであれば、それはそれで組織に対するロイヤリティーは低下していると言わざるを得ない。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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