規制を破り、法律を変える教科書②

山田 肇

昨年出版された『ビジネスパーソンのための法律を変える教科書』と先ごろ発行された『岩盤規制 誰が成長を阻むのか』は、二つ合わせて読むといっそう勉強になる。

『岩盤規制 誰が成長を阻むのか』を執筆した原英史は民間の立場から規制改革会議で規制改革、すなわち事前規制型の行政と関連業界、そして関係議員が作り固めてきた「岩盤規制」を打ち破る努力を重ねてきた。

写真AC:編集部

なぜ文部科学省に獣医師の需要予測ができるのか、なぜ薬剤師は購入者の顔色で具合がわかるのか、家族が代理で買いに来ることもあるのに。合理的に考えればおかしいと感じたら、原はそれを直球で官庁にぶつけてきた。それが規制改革への糸口となった。

獣医学部の新設や放送法の改正に取り組んだが、真意とは異なる報道が行われたり、「報道しない自由」を行使されたりして、なぜ規制改革が必要なのかが国民に伝わっていないと感じていた。それが本書執筆の動機になっている。

法律改正よりも規制緩和。一見疑問符がつく考え方だが、それは官庁に「大事なルールほど通達などの下位規範で決める」という不文律があるからだという。通達によって法律を超える規制がかけられている場合があり、これを突破できれば新しい可能性が生まれてくる。

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『ビジネスパーソンのための法律を変える教科書』に出てくる民泊も、この本で解説されている。「特区民泊」には宿泊数の下限が「民泊新法」には上限が定められているが、これは「本来の規制目的を忘れ、業法の枠組みにとらわれているから」であって、さらに規制改革する必要があると原は指摘している。

経済社会の変化速度は上がる一方である。それに合わせて規制も「朝令暮改」する、アジャイルな政府が求められるというまとめは新鮮である。

繰り返すが、『ビジネスパーソンのための法律を変える教科書』と『岩盤規制 誰が成長を阻むのか』は、二つ合わせて読むといっそう勉強になる。