肉の次は魚!米国で広がる代替食市場

安田 佐和子

代替肉で有名なビヨンド・ミートと言えば、5月2日に新規株式公開を果たした後、乱高下を繰り返しマーケットで大きな話題を振り撒いています。

2019年4月までの1年間で競合インポッシブル・フーズのグーグル検索回数がビヨンド・フードを171%上回ったとのデータがあるほか、割高感も手伝ってビヨンド・ミートに慎重なアナリストが優勢。とはいえ、競合他社が控えるということは、それだけ植物タンパク質市場、もとい代替食市場が米国でホットである証左と捉えられます。アメリカ人の間で、環境と食生活をサステナビリティという観点で結び付ける傾向が高いことの現れとも言えるでしょう。

(カバー写真:Dennis Tang/Flickr)

(カバー写真:Dennis Tang/Flickr)

その米国では地球温暖化への関心が高まるに合わせ、ベジタリアンやヴィーガン(完全菜食主義者)が徐々に増加中。こちらをご覧下さい。自称”ベジタリアン”(ヴィーガン含む)は、上下を繰り返しつつトレンドとして上昇していることが分かります。ベジタリアンやヴィーガンの比率上昇は、リベラル派の増加とも整合的ですよね。

(作成:My Big Apple NY)

(作成:My Big Apple NY)

2017年時点の年齢別でみると、30〜49歳と健康に気遣い始める頃、そして所得が安定してくる頃にベジタリアンあるいはヴィーガンの比率が高まっていました。

(作成:My Big Apple NY)

(作成:My Big Apple NY)

話を元に戻して。

米国では、遂に”魚”が代替食/植物タンパク質市場に参入してきました。提供する企業は、オーシャン・ハガー・フーズです。創業者であるジェームズ・コーウェル氏は、全米調理連盟が約60人にしか付与していない”公認マスターシェフ”の資格を有し、2010年にはニューオーリンズ・マガジンで最高シェフに選出された人物。そのコーウェル氏に代替魚のヒントを与えた場所こそ、築地市場なんですね。同氏はアメリカン・フットボール競技場の2倍近いサイズで巨大なマグロが競りに掛けられている様子に感嘆すると共に、サステナビリティへの疑問を感じ、開発に至ったといいます。

オーシャン・ハガー・フーズが自信を持って売り出すのは、マグロの代替食である”Ahimi(アヒミ)”です。原料はトマト、セサミオイル、遺伝子組替えでない大豆を使った醤油。従ってヴィーガンはもちろん、コーシャーですからユダヤ教徒の方々もお楽しみ頂けるそうな。醤油を使用しているだけにグルテン・フリーではありませんが、健康意識が高いNY市などで人気を博しそうですね。”アヒミ”はオーガニック系スーパーマーケットであるホール・フーズをはじめ、全米で展開しております。

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(出所:Ocean Hugger Foods/Facebook)

国連のレポートによれば、1人当たりの年間魚消費量は20.2kgと、1961年の9kgから倍以上も増加していました。さらに、全世界の海の3分の1で、魚が乱獲されているのだとか。このように切迫した状況下、地球環境保全と美食を重視する方々は「逃した魚は大きい」とならぬよう、買いに走るのでしょうか?

(カバー写真:Dennis Tang/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年6月13日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。