山本太郎議員の「反緊縮」はなぜ正しいか

2019年06月18日 17:30

新田編集長によれば、れいわ新選組代表の山本太郎参議院議員は、今年7月の参議院東京選挙区では当選確実だそうである。私も最初はまさかと思ったが、最近出てくる各メディアの票読みも同じだ。

彼は貧困層の若者の熱狂的な支持を集め、寄付も1.6億円を超えたという。政界第1位の安倍首相の政治献金1.7億円を抜くのは、時間の問題だろう。彼の掲げた「8つの緊急政策」は次のようなものだ。

  1. 消費税の廃止
  2. 最低賃金1500円
  3. 奨学金徳政令
  4. 公務員増やします
  5. 第一次産業戸別所得補償
  6. 「トンデモ法」の一括見直し・廃止
  7. 辺野古新基地建設中止
  8. 原発即時禁止

演説は雄弁で、中身もそれなりに一貫している。この順序でもわかるように、6年前の看板だった「反原発」はほとんど出てこない。メインは反緊縮で、「消費税の廃止」に多くの時間をさいている。その論理は単純である。消費税税収18兆円がなくなったら、国債を増発すればいいのだ。

この話に反論できる経済学者は少ない。大学1年のマクロ経済学の教科書には、そう書いてあるからだ。金利がゼロになると金融政策はきかないが、財政政策はきく。金利が上がったら、日銀が国債をすべて買い取ればいい。自国通貨を発行できる限りデフォルトは起こらない。

こういうバラマキ財政を求める反緊縮は、世界の流行である。アメリカ民主党のサンダース上院議員は、大統領選挙の公約にすべての失業者を公務員として雇用する雇用保障最低賃金15ドルを掲げている。山本氏の「公務員増やします」や「最低賃金1500円」は、このまねだろう。

消費税の廃止でハイパーインフレは起こらない

そんなことをしたらハイパーインフレになるという批判に、彼は参議院調査情報担当室に依頼したシミュレーションを見せる。次の図の左のようにインフレ率は8%の消費税を廃止した直後に5%下がるが、3年後に1.67%上がり、そこでピークアウトするという。賃金は減税で43.9万円増え、誰も損しないようにみえる。

1.67%の算定根拠が不明だが、こういう計算は主流派マクロ経済学(DSGE)の論文にもある。参議院もそういうモデルで計算したのだろう。その前提はすべての国民が合理的だという条件で、税収が減っても合理的な国民が遠い将来に財政は均衡すると予想すると、ハイパーインフレにはならないで長期均衡に収斂する。

そんなむずかしい理屈は山本氏にはわからないだろうが、それはどうでもいい。大事なことは、財政赤字はフリーランチだという彼の主張は、ゼロ金利が永遠に続くなら正しいということだ。ここには減税の財源が書いてないが、それは国債でも日銀券でも同じことだ。

山本氏ツイッターより:編集部

彼の政策は危険だが、それに引かれる政治家は少なくないだろう。かつてリフレ派がそうだった。世界的にみると、反緊縮はギリシャやイタリアで大流行し、イギリスの労働党もそれに合流している。日本で出てきたのは遅すぎるぐらいだ。

量的緩和の一方で財政健全化目標を掲げたアベノミクスは、ゼロ金利時代のポリシーミックスとしては矛盾していた。金融政策がきかなくなった財政支配の時代には、山本氏の財政バラマキ政策のほうが(よくも悪くも)一貫しているのだ。

彼には中核派のような極左だけでなくネトウヨも合流し、ネット上では一大勢力になりつつある。彼は日本には珍しく、ヒトラーのようなカリスマ性を感じさせる政治家だ。それをバカにしていると他の野党が食われ、気がついたら彼が第一党の党首になる――それが1930年代のドイツに起こったことだ。

追記:れいわ新選組への寄付は、6月17日までに1億9,583万円に達したそうだ。安倍首相への政治献金(昨年)を抜いた。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 学術博士(慶應義塾大学)

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