小泉新大臣へ提言:廃プラスティック海洋汚染対策の目玉はこれだ --- 飯田 孝司

2019年09月15日 06:00

廃プラスティックの海洋汚染実態

廃プラスティックの海洋への廃棄量は2010年の推計では中国の353万t/yを筆頭にアジア地区での廃棄量が多い。

Bo Eide/flickr:編集部

対策を立案するには廃棄している場所を特定することが重要である。川、海辺、海洋(船から廃棄)が考えられ、実際にどこから廃棄しているかを示している文献はなかなか見当たらない。そこで、東南アジアの実態について知見を持っている可能性のある人達に、ヒヤリングしてみると下記の指摘が目立った。

川からの廃棄が多い。また廃プラスティックのマテリアルリサイクルを実施する場合、リサイクルできない部分がかなりあり、その残渣を焼却等の適正処理をせずに、川に廃棄している場合が多い。

プラスティックの特徴

・廃プラスティックの特徴比較

可燃or不燃 自然分解の有無 現在の標準的な処理方法
一般の生活ごみ

(厨芥、紙等)

可燃 自然分解あり サーマルリサイクル

(焼却処理)

資源ごみ

(金属、ガラス等)

不燃 自然分解なし マテリアルリサイクル
廃プラスティック 可燃 自然分解なし サーマルリサイクル又は

マテリアルリサイクル

上表に他のごみと比較した場合の廃プラスティックの特徴を示す。一般ごみは可燃性で種々のごみが混合しているため、焼却処理によりサーマルリサイクルするのが一般的である。

一方、資源ごみは不燃であるため焼却処理によりサーマルリサイクルすることは不可能で、極力事前の分別し、マテリアルリサイクルするのが一般的である。廃プラスティックは可燃であるにもかかわらず自然分解せず、今までにない新しいタイプのごみであり、その特徴を考慮した処理が必要となってくる。

廃プラスティックの適正な処理方法

廃プラスティックはサーマルリサイクルでもマテリアルリサイクルでも処理可能であり、コスト競争力を基準に選択すれば良い。サーマルリサイクルは必ず廃プラスティックを全量処理できるのに加え、他の廃棄物と一緒に処理できるので大変便利な処理方法である。

一方、マテリアルリサイクルの場合、さらに廃プラスティックを分別してマテリアルリサイクル可能な廃プラスティックを選別し、その他の残渣はサーマルリサイクルにまわす必要がある。現実は、その残渣なった廃プラスティックはそのまま川から海へと廃棄される場合がある。勿論各個人のポイ捨てもあるが、このマテリアルリサイクル時に発生する残渣の川への廃棄が廃プラスティックの海洋汚染の正体の重要部分を占める。

世界のごみ処理方法、廃プラスティック処理方法の比較

日本は明治以降、衛生管理に重点を置き、廃棄物処理としては焼却処理を中心に推進してきた。その結果、下表に示すように日本のサーマルリサイクル(焼却処理)比率は74%と欧米に比較して大巾に高くなっている。

・各国のごみ処理方法の比較(2003年)(%)

サーマルリサイクル(焼却処理) マテリアルリサイクル 埋立
日本 74 15 11
アメリカ 14 31 55
ドイツ 23 56 20
フランス 34 27 39

一方、ドイツのようにマテリアルリサイクルが得意な国もある。同様にアメリカのように土地が広いので、当面埋立処理を重視している国もある。このように、世界の国々により地理的条件・文化が異なるため、適正な処理方法も画一的に決めるべきではない。

上記傾向は廃プラスティックの処理方法にも反映されている。ところが日本の廃プラスティック処理についてはヨーロッパの影響を受け、何故かマテリアルリサイクル優先の制度となっており、処理コストが高くてもマテリアルリサイクルを選択して処理費用の高騰を招いている。

また、現在海洋への廃プラスティックの廃棄量が多いとされている国々は、おそらくまずサーマルリサイクル(焼却)処理施設の充実を望んでいると思われる。

日本での対策の実施目標

日本の対策の実施目標は下記のとおりにすべきである。

1.  廃プラスティックを全量国内処理可能にすることを目標にする。

2.  具体的にはサーマルリサイクル(焼却)能力の向上を図る。

日本の実施すべき対策

日本で実施すべき対策は下記のとおりにすべきである。

1.  廃プラスティックのサーマルリサイクル(焼却)能力の向上

現在比較的処理能力に余力のある各自治体が所有する一般廃棄物処理施設を有効活用する。その件については既に国から各自治体に当該施設での産廃処理を要請しているが、近隣への配慮等も含めて自治体から断られることも十分考えられる。

したがって、制度としてはっきり位置付ける必要がある(例えば特殊産廃を除いて産廃の一般廃棄物処理施設での一括処理等)。

2.  廃プラスティックの処理コストの改善(リサイクル方法の分類の中止)

リサイクル方法の分類を中止し、状況に適合しコスト競争力のある方法を自由に選択できるようにする。

3.  現在の国の廃プラスティックの海洋汚染対策との比較

現在の国の対策はG20で示された対策も含めて、まだ網羅的で焦点が定まっていない。本レポートの提言のような実効性のある対策に早急に移行していく必要がある。

他国への働きかけ

廃プラスティックによる海洋汚染の責任は、当然排出国にある。日本としては、関係他国の実情を理解し誠実に向き合って対応していけば、双方にとって成果の期待できる活動となる。

本テーマの基本的視点

本テーマの基本的な視点を確認し、列挙すると下記のようになる。

1.  私達と廃棄物処理は私達の生活そのものである

廃棄物処理は私達の生活と極めて密着している。したがって、地域による生活・文化の差はそのまま廃棄物処理方法の差にもなって表れている。

例えば日本のような米食文化の国では家庭からの廃棄物には水分が多く、保有エネルギーも2,000kcal/kg程度であるが、欧米のようなパン食文化の国では水分が少ないため3,000kcal/kg以上と高い。

そのため、日本では殆どの場合、家庭ごみを焼却する場合助燃しており、廃棄物中の廃プラスティックはエネルギーとしての価値も高く、サーマルリサイクルにも適している。

2.  日本の廃棄物処理は稲作文化を生かしている

日本の廃棄物処理の基本を規定しているのが廃掃法である。この廃掃法は欠陥法と揶揄する声も多いが、私はそうは思わない。確かに、この法律の課題はと言えば数多くあるかもしれないが、各種リサイクルを実施するにあたり、上手に社会で役割分担しており、これは稲作文化の特徴でもある。

3.  文明の発展に対する静脈産業の役割は大きい

プラスティックの海洋汚染問題が生じた原因は「プラスティックそのものが悪いのか、それともプラスティックの処理方法が悪いのか」。

プラスティックは人体に無害であり、極めて人類に有益なものである。したがって、廃プラスティックの処理を適切に行えば、今回のような環境問題は発生しない(東京都23区の廃プラスティックを分別しない処理方法が一つのモデル)。

プラスティックのような有益なものを安心して人類が引き続き使用していけるようにすることは、廃棄物処理のような静脈産業の大切な役割でもある。

4.  地方創生事業を推進しよう

全国の市町村に散らばっている一般廃棄物処理施設をさらに有効活用して国全体の焼却能力を向上させていくことは立派な地方創生事業である。

5.  政治・行政の役割は大きい

本提案を推進しようとすると、「世界の中で孤立するのでは」とか「地域住民の理解を得られないのでは」と言う懸念を指摘する有識者もいる。懸念の指摘も必要だか、相手を説得してブレークスルーする努力の方がさらに重要である。

本提案を推進していくための政治・行政の役割は大きく、とりわけ新進気鋭の環境大臣の先頭に立った大活躍を期待します。

飯田 孝司 一般社団法人ディレクトフォース会員
1947年生まれ。1971年早稲田大学卒業。1971年新日本製鐵入社。1999年三菱マテリアルに転籍(2011年退職)。2007年ディレクトフォースに入会(現在に至る)

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