依存症界の特権 親子でHUG!

2019年09月17日 14:00

9月14日は、NPO全国ギャンブル依存症家族の会の第2回総会があり、15日には、ギャンブル依存症の当事者の自助グループの全国大会があって、2日連続でギャンブル依存症からの回復を目の当たりにした感動的な希望あふれる日となりました。

ご存知の通り、依存症というのはとても回復しにくい病気です。
特にギャンブルは一時的に「止める」ということはできるのですが、「止め続ける」ということがとても困難で、いともたやすく再発してしまいます。

アルコールや薬物の人が、再発への引き金にならないよう「お酒や薬物に近寄らない」という努力をされるように、ギャンブルももちろん「ギャンブル場に近寄らない」という自助努力はしているのですが、ギャンブルはもう一つの引き金に「お金」があります。お金に余裕があっても、お金に余裕がなくても、どちらも「お金のために」再発してしまいます。

お金に余裕があれば「少しくらいなら」と思いますし、お金に余裕がなければ「一発当ててお金を作るしかない。」と思いこんでしまします。

お金は日々必要で、直面するわけですから、ひっきりなしに「引き金」「トラップ」が、仕掛けられているような状態にあるわけです。

ですから、私の肌感覚では、「アルコール・薬物より、止まりやすく、再発しやすいのがギャンブル」という感じがしています。

再発というのは依存症者にとって、とてもきついです。
私も、今もしギャンブル三昧になってしまったら、「また止めるための努力をイチからやらねばならない」と思うと、やりとおせるか自信がありません。「もうこのまま死ぬまで止められる気がしない。もう無理だ。」と思ってしまうかもしれません。

ですから、自殺率も高く、そこまでいかなくても行方不明になっていたり、刑務所に入っている仲間も多いです。

それでも何故私たち家族は、笑顔を取り戻すことができるのか?
それはやはり回復者を目の当たりにし、そして「回復はある!」と信じることができるからです。
ですから私たちの世界では、重症でなかなか回復できず苦しんだ人であればあるほど、その人が回復したとなると、多くの人達が救われ、希望を持つことができるのです。

14日に行われた、全国ギャンブル依存症家族の会では、そんな仲間の一人が回復のストーリーを語りました。

実はこの仲間は、野球賭博や闇カジノといった違法賭博にハマっていて、お母さんだけでなく、母の実家の祖父母も巻き込んで、大変な状況になっていたんですね。

そして家族だけではどうにもならないということで、私が介入に出動したんです。
その頃ちょうどNHKさんの取材が私の追っかけでついていて、たまたまこの介入の様子を、ご本人、ご家族了解のもと映像に収めることができ、番組で放映されたんですね。

だから「あぁ、あの番組のあの人が、こんなに回復したのか!」と、御来場されたご家族の皆さんが驚きと共に、大いに喜んでくれたんですね。

私は、彼がスピーカーに決まったと聞き、お母さんに「是非来て下さいね」と連絡を入れました。
お母さんは驚きと共に、とても喜んで下さって「是非、行きます!」とお返事をくれました。
そして当日。会場で、彼のスピーチを涙しながら見守るお母さん。
私は、司会をしていたので、彼のスピーチが終わると同時に、お母さんを舞台にあげました。

そして一言彼の回復に対してコメントを貰ったのち、「じゃあ、是非ここででHUGを!」と、申し上げました。

親子でHUGなんて、ホント依存症界の特権じゃないでしょうか?
日本はそもそもHUG文化が浸透していませんが、依存症界ではHUGは日常の光景なんですね。

私も仲間としょっちゅうHUGしていて、HUGが大好きです。
辛い最中の仲間なんかはHUGすると、泣きだしてしまう人も沢山います。

でも泣けるって癒しなんですよね。
だからそんな時は「大丈夫だよ!」と言って、しばらくの間そのままにしています。

今回の親子でHUGも、最初照れていましたが、息子の方がお母さんにHUGしてあげると、お母さんもそっと息子さんをHUGしてあげていました。

「あれだけ心が離れ、いがみ合い、ののしりあっていた親子も回復すれば再生するんだなぁ」と、私もとても嬉しく思いました。

彼はしきりに「りこさんのお陰」と私に感謝してくれるのですが、それは全然違っていて、回復プログラムに向き合ったご自身の努力の賜物なんですよね。プログラムに向き合うことがどれだけ辛いか、私も身をもって経験したので、その勇気に素直に敬意を表しています。

私たち家族は、ギャンブラーにどれだけひどいことをされようとも、どれだけお金を使われ、暴言を吐かれ、時には暴力をふるわれようとも、でもどうしても嫌いになれない…だから辛いんですよね。

その人自身を、憎み、いっそ切り捨てることができたらどんなに楽か…
だからこそ家族自身が家族プログラムに取り組み、ギャンブラーのためにも、自分のためにもどう行動すればいいのか?を学び、まちがった手助けを止めていく必要があります。

でも間違った手出すけを止めた先に、希望のストーリーがなかったら、誰も怖くて、ギャンブラーの尻拭いをやめられないですよね。だから舞台の上のHUGは、回復の希望となるロールモデルの証しです。

次の総会でもまた沢山のHUGが見られますように!
そして私たちが、まだ苦しみの中にある沢山の家族を救い出すことができますように。


田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト

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公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表

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