復興総括④

藤沢 烈

9月30日は、復興庁・復興施策総括ワーキンググループの第四回会合でした。復興の制度・財源についての総括という重要な会でした。またボランティア・NPOの協働についても触れられており、私もコメントしました。

復興庁|東日本大震災の復興施策の総括に関するワーキンググループ(第4回)[令和元年9月30日]

その際に、9月11日に行われた第三回の議事要旨が公開されています。こちらから、私が主に行ったコメントを紹介します。

コミュニティ支援

・コミュニティ形成の支援により自治会の設立が進んでいるが、自治会の設立状況だけでなく活動などの質的な点や、設立された自治会の持続性を見ていくことも必要。

・被災者支援総合交付金は被災者支援に寄与しているが、今後はさらに有効に使っていく観点から、アウトカムを意識した補助の選定や評価が必要。

(復興庁総括ワーキンググループ第三回より)

住宅再建にとどまらず、地域の人と人との繋がり(コミュニティ再建)まで取り組むようになったのは復興行政の大きな前進でした。ただ、まだまだ「自治会結成率」に指標がとどまっていて、実際にどの程度つながりが回復しているかまで検証されていないのが課題です。また自治会そのものが高齢化が進んでおり、公営住宅自治会が成り立たず、地域の自治会との融合が必要な地域もあります。

被災者支援総合交付金は年間200億という多額な費用が今でも使われています。大事な財源だからこそ、いかにアウトカムにつながっているかの検証が必要です。

事業者支援

・販路の開拓について、地域には専門的人材が不足しているので、専門的人材を派遣する国の支 援は大変意義があった。今後は地元でこういった事業者支援が成り立つようサポートする必要がある。

・生業の再生について、各地域において雇用者数、従業員数が不足しており課題と認識。地域全 体で人材採用のノウハウを高め、外から人を呼び込むことが必要。

・グループ補助金はその後の大規模災害でも有効に機能している。大規模災害の特例である、グループ補助金や税制特例がどう有効に作用したか発信することが必要。

・産業・生業の再生においても事前防災は重要。ある自治体では発災前から立地する事業者の経営状況を把握していたので、国の支援が決まった段階で速やかにそれを導入できた。

(復興庁総括ワーキンググループ第三回より)

事業者支援は現状東京のコンサルタントが取り組んでいますが、単価が高く移動宿泊費がかかり高いコストがかかりますから、長くは続きません。各地域にコンサルタント人材が定住し、密着した支援に切り替えていく必要があります。

また事業者が新しい事業に取り組もうにも人手が足りません。しかし現状は採用・定着ノウハウもなく、また優秀な人材を迎え入れる制度や体制も十分ではありません。このあたりの仕組みを整える必要性をコメントしました。

アーカイブ・企業支援

・今後の大規模災害に備え、東日本大震災の教訓を残すことは極めて重要。東日本大震災におけるノウハウをきちんとアーカイブし、後世の人が参考にできるよう環境整備すべき。

・企業による復興支援について、まだまだ支援したいという動きがある。企業版ふるさと納税の動きとも呼応し、こういった動きを加速化させてほしい。

(復興庁総括ワーキンググループ第三回より)

東北の復興は、長くかかっていることと、地域が分散しているため、ノウハウの集約が不十分です。今後も日本社会は大災害が発生します。生じたノウハウを後世の方が手に入れられる仕組みの整備も必要です。

復興の総括は10月にとりまとめ、2021年以降の東北復興に向けた基本方針に反映される予定になっています。

参考

復興総括③』(9/13)
復興総括その後』(9/4)
東北復興の検証はじまる』(7/24)


編集部より:この記事は、一般社団法人RCF 代表理事、藤沢烈氏の公式note 2019年10月3日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は藤沢氏のnoteをご覧ください。