「お金がないから、やりたいことができない」「子どもが小さいから、まだ自由がない」「本当は起業したいけど、夫にゆるしてもらえなくて」「おとなになってからの友だちには、本音がいえなくて苦しい」。
きれいごとや理想論では物事は解決しない。ネガティブやブラックな感情を上手に操らなくてはいけない。
今回は、『わたしたちは、いつだって好きなことをして生きていける。』(サンマーク出版)を紹介したい。著者は、直島美佳さん。女性専門のお仕事コンサルタントとして活動をしている。
100%好かれるシチュエーションとは
本書はいわゆる自己啓発書になる。その多くは聞いたことがあるようなフレーズだが、筆者がもっとも共感した部分を紹介したい。
友達関係、恋愛関係、親子関係、悩んでいるのは、人との関係がこじれたことが原因ではないか。「人から100パーセント好かれる方法」があると直島さんは解説する。「それは、人のうれしいニュースを聞いたら、ピョンピョン飛び跳ねて、全力で喜ぶこと」である。
人が悲しいときに心配するのも好かれる方法なんじゃない?と思う人もいるだろう。しかしそれは違うようだ。理由は、悲しいときって、そっとしてほしい人も多いからである。さらに、その人と同じくらい悲しむことはできない。
(直島さん)「わたしがすごく落ち込んだとき、あなたは『心配しているよ』と言ってくれるかもしれない。でも、予定を全部キャンセルして、わたしと同じくらい泣いてくれないでしょう?『心配しているよ』って、さっき言ってくれた人が『わー、ここのランチ最高』なんて、SNSに投稿していたら。その人のことを嫌いになってしまいます」
このような場合は、気兼ねなく喜べるシチュエーションが望ましい。それが「うれしいニュースがあったとき」だと直島さんは答える。「ピョンピョン飛び跳ねて自分のことのように全力で喜んでくれた人のことは 100パーセント好きになりますよね」。
人を応援すると自分に返ってくる
筆者が20代の頃の出来事になる。当時はコンサルテイング会社に勤務をしていた。組織体制や顧客の状況、目標設定に違和感を覚え上層部に直談判をしていた。しかし主張は聞き入られることもなく、気がついたら理不尽な目標設定が残されただけだった。
社長「他の連中はみんな目標設定終わったから。お前の目標は残り全部だから!」
尾藤「えっ、マジで?しかも顧客の割り振りが終わったってどういうことですか?」
社長「お前が悪いんだ!全部、新規で開拓すればいいぢゃないかww?ん」
コンサルティング会社は、個人事業主の集まりである。年間の予算が振られて、期末の達成率に応じて報酬が支払われる。実績顧客がゼロの状態だったので、新規案件はすべて廻してもらう約束で目標設定をおこなった。上層部に歯向かった報いである。とりあえず1年頑張ってダメだったら腹をくくるつもりだった。
顧客ゼロだからまったく実績が上らない。他の社員も気まずそうだ。そこで考えた。若手が実績を挙げたら目一杯喜ぼう。“ピョンピョン”と喜ぼう。8ヶ月目にようやく案件が受託できた。その案件は、事業部利益50%をたたき出すほどの大型案件に育った。期末、気がついたら私は、コンサル会社世界1位(50カ国)の達成率を計上していた。
社内で味方はどうやってつくるのか、上司とはどうやって握るのかなど。この経験は、それ以降の、マネジメントに大きな影響を与える出来事になった。
直島さんは、おけいこ歴49年、全356教室通った“おけいこマニア”。さらに、45歳で三つ子を出産した“6歳児たちのママ”。秘けつは「こだわりを手放す」こと。そして、「計算をする」ことだった。今回、出版の夢を実現させた、直島美佳さんの前途を祝したい。
[本書の評価]★★★(75点)
【評価のレべリング】※標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★ 「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★ 「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★ 「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
星無し 「レベル0!読むに値しない本」50点未満
※2019年に紹介した書籍一覧
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※14冊目の著書『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)を出版しました。