「地方創生省」を速やかに創設せよ

地方の衰退が止まらない

日本では依然として地方の衰退が止まらない。地方の勢いや活力が衰え弱まる地方衰退は、地域から人が減り、地方経済が衰退し、仕事が減り、町が衰退する地域経済の悪循環が続くことで起きる。これは、日本経済全体の低成長、衰退をもたらすものである。

地方衰退の原因としては、地方の人口減少問題が重要であり、人口減少が進行すると、税収が減少し、地方は財政破綻を起こす危険が生じる。地方における人口減少問題を解決するためには、何よりも地方経済の活性化が不可欠である。

Harrie/写真AC(編集部)

地方分権改革としての「平成の大合併」

2005年頃がピークであった地方分権改革としての「平成の大合併」で74.5%の市町村が合併した。大合併の最大の理由は、地方の人口減少、少子高齢化等による社会経済情勢の変化に起因する財政問題であった。大合併により地方分権の担い手となった基礎自治体では、何よりも行財政基盤の確立と、その源泉としての利益を生み出すことが極めて重要とされた。

そのために、国の補助金が活用され、2019年の地方創生関連予算は3兆円に近い。それにもかかわらず、依然として、地方の衰退は止まらず、地方都市の人口減少や荒廃が進み、シャッター街や限界集落も無くならない。その反面、東京一極集中が止まらない。

地方の活性化は日本経済成長に不可欠

日本の名目GDPは、東京、名古屋、大阪の三大都市圏が5割、その他の地方が5割を占める。雇用についても、三大都市圏が4割、その他の地方が6割を占める。このように、日本経済に占める地方のウエートが高く、日本経済の成長と活性化のためには、地域経済の活性化が不可欠である。

地方創生のためには、国の補助金も重要であるが、地方自治体自身による地域住民を巻き込んだ主体的自発的取り組みと、創造的取り組みが必要であり、地方自治体相互間の競争意識を高めることも重要である。

具体的には、① 地方・地域の自立を支援する国の施策、② 地方に夢を持たせ、夢の実現を支援する国の施策、③ 仕事の創出を支援する国の施策—などである。

「ふるさと納税制度」の重要性

この点では、「ふるさと納税制度」は、国に頼らない、地方自治体の自主性、創造性、独自の財源確保に極めて重要である。

しかるに、今回の泉佐野市等に対する総務省による中央集権的な規制強化は、地方の自主性、創造性、活性化を阻害し、地方創生に明らかに逆行するものである。総務省は自主性、創造性を阻害する不当な圧力や干渉はやめるべきである。国は地方自治体に自主的な権限と財源を保障すべきである。

強力な権限を有する「地方創生省」を速やかに創設せよ

現在、地方創生に関する行政を所管する大臣は、内閣府に置かれ、内閣府特命担当大臣(地方創生担当)の一つに過ぎず、独自の省庁を有しない。前記の通り、GDPの5割、雇用の6割を占め、21世紀の日本経済の成長発展にとって極めて重要な「地方創生」を担当する大臣が、独自の行政組織としての省庁を有しないことは、「地方軽視」にほかならず、大きな驚きであると共に、極めて不当である。

よって、21世紀日本の画期的な地方創生のために、強力な組織と権限を有する「地方創生省」の速やかな創設を提案するものである。

加藤 成一(かとう  せいいち)元弁護士(弁護士資格保有者)
神戸大学法学部卒業。司法試験及び国家公務員採用上級甲種法律職試験合格。最高裁判所司法研修所司法修習生終了。元日本弁護士連合会代議員。弁護士実務経験30年。ライフワークは外交安全保障研究。