広域災害での救助を手助けする無線の仕組みが必要 --- 竹内 嘉彦

2019年10月22日 06:00

度重なる災害発生の中で、自分の命は自分で守る姿勢は一般にも広がり始めている。一方、ここ十年をとっても災害の広域化が課題になっており、一般個人が周りの助けを借りて助かるにも限度がある。災害救助を目的に訓練を積まれている複数組織のプロの方々に応援を期待せざるを得ない場合も多い。

台風19号の被災地での救助活動(陸上自衛隊HPより:編集部)

これら応援を要請される方々は各々現地にて手探りで作業をするばかりではない。背後にバックアップ体制があってこそ初めて実力が発揮される。これらバックアップ組織を結ぶ通信回線、特に映像情報を含む広帯域の無線回線が重要。また、複数組織の横の連携も重要である。複数組織が同一目的で使用する広帯域無線の必要性と課題に関しては、既にアゴラで山田肇氏が指摘している(「公共安全LTEが動き出した」)。

具体的には、規制改革推進会議の答申(2017年11月) を受けて、総務省での電波有効利用成長戦略懇談会では諸外国の状況を踏まえた議論がされ、そのフォローアップ状況も報告されている。関係省庁が参画する場において、我が国に導入すべきPS-LTEについての整備・管理主体や機能要件をはじめとする詳細の具体化が検討されていると聞く。技術的には、PS-LTE実現の必要通信エリアの拡大・補完に資する技術的検討(今年度)、模擬環境を構築し技術的検討(来年度)を行う予定として予算準備もされている。

総務省電波利用HPより:編集部

ここで、ブロードバンド化には周波数の確保が課題となる。非常時だけの周波数確保は許されない。必要以上に周波数を占有しない解決案の一つとして、ダイナミック周波数共用が検討されている。全てのシステムに適用可能とは言えないが、時間と場所で周波数をフレキシブルに割り当てれば、非常時の対応力が高まる。

それと同時に、現実的なシステムの進歩・変革と歩調の合わなくなっている年単位の準備期間を要する周波数割り当て・再編・見直しは、技術的には秒単位のフレームで管理することができるかもしれない。割り当ての管理としてブロックチェーンを用いる方法も考えられる。

一方、公共安全LTEは複数の組織間で共用する枠組みが前提だ。それぞれの組織は考え方が異なるだろうし、過去の貴重な蓄積を抱えているかもしれない。非常時に共有される情報の特定、オープン化の準備も必要だ。

また、平常時でも共通化しておくだけのメリットも重要だ。システムの運用には多くのノウ・ハウも必要だろう。さらにハード面の準備だけでなく、公共安全に関わる情報そのものが世の中を駆動し、関係者を手助けしてゆく仕組みに仕上げることが重要だ。

PS-LTE導入に向けての技術的検討もダイナミック周波数共有も前向きの動きである。一方で、自然災害は待ったなしで「100年に一度」が毎年発生している。広域災害での救助を手助けするPS-LTE等が一刻も早く実利用されるように政策検討や制度整備を進めるべきだ。

竹内 嘉彦(たけうち よしひこ)元日本無線 研究所 所長、工学博士
早稲田大学卒業後、1980年日本無線株式会社入社、同研究所に配属。電子デバイス、無線通信機器、システムの開発に従事。在職中の1994〜97年東北大学大学院で学び工学博士取得。総務省の情報通信審議会 情報通信技術分科会の委員なども歴任した。

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