今年の漢字は「災」。各地で大災害が相次ぎ、そのたびに県境を越えて警察や消防の応援隊が駆け付けた。それでは、応援隊は現地でどのように通信しているのだろう。
公共安全に直接影響するため警察無線や消防無線に関する情報はあまり公開されていない。それでも探したところ、消防無線は2016年頃までにデジタル化されたこと、現場の部隊間で直接通信するのではなく、基地局(消防が設置)で折り返して通信するようになったこと、消防無線のチャンネルは全国共通波・県内共通波・市町村波に三分され、このうち全国共通波は他の地域での活動を支援するために全国の消防が共通で使用するように設けられたチャンネルで、現在は3波で運用されていることなどがわかった。やり取りするのはほとんど音声で、それ以外はショートメール程度だそうだ。
応援隊は全国共通波を利用して当該被災地の消防本部と通信するが、これは警察でも同様である。消防と警察が互いの情報を直接取ることは無線システムが異なるのでできない。その代わり、地元部隊と応援隊からの情報は知事を本部長とする災害対策本部に集約され、本部からそれぞれの部隊に活動指示が出される中央集権形になっている。
ここまで説明した方式にはいくつかの問題がある。通信網は警察・消防などがそれぞれ独自に整備しているので重複投資となっている点。異なる機関間の情報流通が災害対策本部経由に限られている点。そして何よりも映像情報などが通信できない点。
公共安全LTEは、警察・消防などの公共安全機関がLTEネットワークを一つだけ構築する。同じネットワークを使うので、警察と消防が現場で通信することも必要に応じて可能になる。LTE網なので映像を含めて多様なコンテンツが流通できる。
先日の情報通信政策フォーラム(ICPF)では、小林史明衆議院議員(前総務大臣政務官)に講演いただいた。小林衆議院議員は公共安全LTEの利用が消防を皮切りに2020年にスタートすること、周波数帯は以前話題になっていた200MHz帯ではなく移動通信帯となることなど、新鮮な情報を提供してくださった(スクープかも?)。わが国でもやっと公共安全LTEが動き出したことは感慨深い。