女性・女系天皇では天皇制廃止になりかねない理由

2019年11月10日 11:30

宮内庁サイトより

台風で延期になっていた即位のパレードが本日、行われて、残る重要行事は大嘗祭ということになった。

それとともに、皇位継承問題についての議論が活発化することになりそうで、男系派、女系派の動きも活発になっている。

そんななかで、私の立場は、女性天皇はもちろん女系天皇も絶対にダメだというわけでない。しかし、君主制というのは従来の原則を大きく曲げないからこそ値打ちと正統性があるのであって、従来のやり方を続ける努力もしないで、現在の君主に男子がいないから女性・女系天皇にしてしまえというのでは、天皇制が正統性を失ってしまうと思うのである。

そして、もうひとつ思うのは、これから千年先とかは別としても、100年、200年というくらいの期間にあってすら、確実に継承を確保するためには、それなりの数の控え(スペア)を持たないと危険だと言うことだ。

そういう意味で、いわゆる女系論はかなりの確率で、皇統の継承者が誰もいなくなり、天皇制は廃止ということになるリスクが高いと思う。

というのは、これまで議論されてきた女系論というのは、つまるところ、悠仁さまの子孫で男系男子が続くとは限らないので、上皇陛下の三人の孫娘とその子孫に継承権を認めるべきだという考え方であって、それ以外の女系子孫を念頭に置いた議論は聞いたことがない。

そして、平成の時代にあっては、当時の陛下の嫡孫である悠仁さままでの継承はいいが、そのあとが続かなかった場合に備えて、眞子さま、佳子さま、愛子さまに女性宮家をつくってもらい、結婚後も皇族としての身分を継続させるべきだと言うのが内容だった。

ところが、令和の代替わりが近づくと、新しい陛下の娘である愛子さまが、弟である秋篠宮皇嗣殿下や甥である悠仁さまに優先すべきだとかいう人が増殖している。

しかし、世界各国、とくにヨーロッパなどの王室制度を知るものにとっては、そういう現在の君主に娘しかいないから原則を変えて継承させろと言う佞臣の浅知恵は、英仏百年戦争、オーストリア継承戦争、スペイン内乱といった国家の統一や独立を危うくすることにつながってきた危険極まりない考えだと教えてあげたい。

しかし、さらにまずいのは、これが、男であろうが女であろうが、上皇さまの四人の孫とその子孫に皇位継承を限定しようという発想に基づいていることだ。

ところが、わずか四人の人間の子孫では、百年、二百年、さらに何世紀かして誰か残っているかなど分からないのである。数学的な確率では比較的、高い数字が出るかもしれないが、近親関係にある四人ということを前提にすると、誰も子孫を残せなかったという可能性はかなり高いのである。

まして、近親での結婚が多かったせいか、皇室では子どもができている率がほぼ半分と平均的な日本人より低いし、女子の割合も高いのである。

かりに、いまから何世紀かたって、四人の子孫は誰もいないということになっても、それから旧宮家というわけにはいかないだろう。

そうであれば、上皇さまの四人の孫以外の皇位継承の可能性まで否定するのはいかがなものかと思うのである。逆に、旧宮家だけでは、すでに11宮家から脱落者やそれがほぼ確実なものも出ており、永続性に不安が残るのである。

そこで、私は男系論の人も女系論の人も、優先的な順序は横に置いて、互いに両方の継承可能性を否定しないことが必要だと思う。具体的には旧宮家がなんらかのかたちで復帰することを女系論の人は容認すべきである。

女系論の人は、上皇さまの子孫に限定することをもって忠義だてしているつもりかもしれないが、かりにその結果として皇統が断絶したりすれば、将来の歴史において批判は平成の陛下に向かうことは間違いないのであるから忠義を尽くしたことにならない。

女系での継承といっても、せめて明治天皇の女系子孫すべてに拡げないと危なくて仕方ない。とすれば、旧宮家のうち北白川、朝香、竹田、東久邇の四家については、旧宮家としてだけでなく明治天皇の女系子孫として資格が生じるのであるし、三笠宮・高円宮両家の女王さまたちの子孫も同様である。

また、逆に、旧宮家の復帰さえ実現したらもう大丈夫というのもおかしい。男系と言っても賜姓華族や皇別摂家も含めないと不安は続く。しかし、そのあたりになると、女性皇族の結婚相手としてはともかく、本人の皇族復帰にはかなり違和感がある。

そういうことも含めて、女系子孫もやはり皇位継承の受け皿として確保していくことは必要だと思うのである。

私は、すでに継承順位二位でおられる悠仁さまを廃嫡して愛子さまにというのは、難しいと思う。愛子さまがずっと独身でおられるとか、旧宮家の誰かと結婚するならともかく、そうでない限りは、結婚相手にどういう肩書きを与えるかも大難問になる。

ヨーロッパの例を見ても、それは大騒動がかなりの確率で起きると見た方がいい。エリザベス女王の夫君のフィリップ殿下は王配殿下の称号をチャーチルから拒否されてかなりご不満のようだし、デンマークでは女王の夫君が王配殿下の称号はもらったが、国王の称号を要求し、聞き入れられないことから、王家の墓に入ることを拒否する宣言をして話題になった。

そのあたりを考えると、悠仁さままでは確定として、悠仁さまの後が続かなかった場合に備えて旧宮家と女系と両睨みで体制を整えるというのが正解なのだと思う。

悠仁さまが上皇さまが退位されたのと同じ85才になられるのは、2093年。あわてて、結論を出す必要などあるまい。

八幡 和郎
八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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