IR疑惑:チャイナマネー政界工作リスクが日本でも現実に

2019年12月26日 06:01

IR疑惑で、東京地検特捜部が25日、秋元司衆議院議員(東京15区)の逮捕に踏み切った。外為法違反を「入口」にはじまった強制捜査だったが、逮捕容疑は最初から「本丸」とみられた収賄容疑。個人的には収賄容疑は再逮捕のときに行うと予想していたので、展開が思ったよりスピーディーなのが気にはなった。

逮捕された秋元議員の副大臣時代(国交省サイトより)

そして同日夕方には、白須賀貴樹衆議院議員(千葉13区)、勝沼栄明前衆議院議員(宮城5区)のそれぞれの地元事務所にも特捜部が家宅捜索を行ったことが判明。政界にさらなる激震が走った。永田町では、特捜部が「本命」にしている大物議員の名前もすでに取りざたされているようだ。

今後の展開によっては年明けの通常国会が桜を見る会に続くスキャンダル騒ぎになるだけでなく、政府のIR推進の大幅な遅れ、場合によっては安倍政権の命運にも影響する可能性も捨て切れまい。

チャイナマネー工作リスク浮き彫りに

ここまではマスコミの速報で周知された話だが、ネット文脈でみると、これもさんざん指摘してきたように、安倍政権・自民党を支持してきた保守層にも異変の兆しがある。中国出身の評論家で保守層に強い影響のある石平氏は、秋元議員逮捕の報を受けてツイッターで実に本質的な指摘をした。

チャイナマネーによる政界汚染は決して夢想ではない。秋元議員はまだ逮捕されただけなので、いまの時点では推定無罪であるべきことと断った上でのことだが、仮に秋元議員に収賄や現金授受の事実がなかったとしても、日本の政治家が中国企業、あるいは中国政府から買収される「リスク」が浮き彫りになったこと自体は異論はないだろう。

パナマでは前大統領が巨額の資金受領疑惑

渦中のバレラ前大統領(Wikipedia)

折しもおとといのアゴラで、パナマの前大統領が在任中に台湾と断交し、中国との国交樹立に乗り換えた際、中国側から1億4300万ドル(155億円)を受け取った疑惑が現地で報道されたことを紹介したばかりだった(中国側は否定)。

パナマ前大統領が台湾断交・中国国交樹立の際、1.4億ドル受領発覚

パナマが一世紀以上も続けてきた台湾との外交関係を経った背景には、パナマ側には中国資本の誘致で経済活性化の思惑が、一方の中国側は大動脈であるパナマ運河一体の権益を確保し、アメリカの“裏庭”に食い込むことが目的だったとみられている(参照:日経ビジネスオンライン・福島香織氏「中国がパナマと国交樹立、その意味を考える」)。

経済大国化が著しい中国は、パナマ運河の各国別通過荷物量で近年はアメリカに次ぐ2番目に多かった。2018年度は日本に追い抜かれたが、これは米中貿易戦争の影響とみられた。貿易戦争がなければ堅調にプレゼンスを上げていたはずだ。

パナマ運河(Kaspar C/flickr:編集部)

いずれにせよ、パナマ側にとっても中国への乗り換えは経済的に見れば一見合理的のように思われたが、もし前大統領が、台湾断交・中国国交樹立と因果関係にある巨額の資金受領を本当にしていたのであれば、中国側の外国に対する政界工作がとてつもない規模で行われていたことになる。

オーストラリアでは現職大臣の政策決定にも影響か

ロブ元貿易相(Wikipedia)

政界工作はパナマのような小国だけではない。ロイターなどによると、オーストラリアではアボット政権時代の2014年、アンドリュー・ロブ貿易相(当時)が中国とのFTAを締結した際、中国企業「嵐橋集団」から約10万オーストラリアドル(約759万円)の政治献金を受領していたことが発覚した。

この嵐橋集団は2015年10月、ダーウィン港の地元州と、港のリース契約を99年間交わした企業であり、同社の背後で中国政府の意向が働いているのは確実とみられている。ダーウィン港の99年間リース契約は、中国にとってオセアニアに橋頭堡を築き、寄港する米軍艦船の戦略にも影響を与えることから、当時は日本でも特に保守層には衝撃的に受け止められた。

しかも、ロブ氏は政界を離れたあとに、嵐橋集団の顧問契約を締結。年収88万のオーストラリアドル(約6680万円)を得ていることが豪州メディアの報道で明らかになっており、その異様な蜜月ぶりが問題視された。

安全保障視点からも検証を

tonynetone/flickr

翻って今回の日本のIR疑惑は、日本でのカジノ解禁をにらみ、一山あてようとした中国企業の営業上の動きであって、背後に中国政府の存在があるかは考えづらいところだ。

しかし中国政府が、外交・安全保障・通商上の戦略を展開する上で、日本国内でも政界工作をするオプションを取ろうと思えば、石平氏も指摘するように買収額は、秋元議員の疑惑であげられている数百万円とケタ違いの“相場”になることは、パナマやオーストラリアの事例をみると明らかだろう。

おそらく朝日新聞などの多くの日本メディアは、IR疑惑についてあくまで政権与党に対する糾弾材料や政局ネタでしか報じないであろうが、チャイナマネーによる政界工作リスクという安全保障視点も含めて考えていくべきだ。

新田 哲史   アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長
読売新聞記者、PR会社を経て2013年独立。大手から中小企業、政党、政治家の広報PRプロジェクトに参画。2015年秋、アゴラ編集長に就任。著書に『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックス)など。Twitter「@TetsuNitta」

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