「共産党」を誤解している野党議員へ

2019年12月30日 11:30

日本のネット言論界で共産党が「普通の政党」かどうかで議論を呼んでいるという。「普通の政党」が何を意味するかで議論の方向も変わってくるが、当方は日本の共産党は「普通の政党」とは思っていない。極めて危険な政党と受け止めている。

▲オーストリア共産党のミルコ・メスナー議長(オーストリア共産党公式サイトから)

▲オーストリア共産党のミルコ・メスナー議長(オーストリア共産党公式サイトから)

このコラム欄で「『共産党』を“誤解”している友へ」(2015年11月8日参考)というタイトルのコラムを書いたが、当方の共産党への考えは当時と変わっていない。

共産党は明確な世界観、歴史観、人間観を有している。日本共産党は先日、野党連立政権構想を打ち上げたが、チャンスが到来すれば、共産党主導の一党独裁政権を樹立することが狙いだ。その途上では、妥協も惜しまないし、主要テーマの棚上げも辞さない。その点、自由民主党を含む他の日本の政党とは明らかに異なっている。

共産党は過去、党綱領を変更し、「革命政党」といったイメージを払しょくするために腐心してきたが、共産党の核、プロレタリアート一党独裁政治は不変のドグマだ。日本の国民が関心をもつ天皇制や自衛隊の合法性については、「国民の総意に従って……」と柔軟に対応する方針を明らかにしてきたが、共産党は今も天皇制の廃止、自衛隊の解体という点で何も変わっていない。

ところで、オーストリアにも共産党(1918年結成)は存在するが、戦後、連邦議会レベル、国民議会(下院)で議席を獲得したことがない。ただし、シュタイアーマルク州の州議会とグラーツ市議会で計4人の議員がいる。

オーストリア国民は共産党が如何なる政党かをよく知っている。ソ連・東欧共産党政権時代、200万人以上の国民が共産圏からオーストリアに政治亡命してきたから、共産党政権の実態が何かを教科書や学者から教わらなくても知っているのだ。

共産党政権が牛耳っている国から国民が逃げてくるということは、共産党政権が国民の幸福を保証できず、人権を弾圧し、信仰の自由も圧迫してきた結果だからだ。オーストリアの過去の連邦議会選の結果を見れば一目瞭然だ。繰り返すが、オーストリア国民は難しいマルクス・レーニン主義を理解していなくても、共産主義世界観の“実態”を目撃してきたのだ

日本では共産党、共産主義に惹かれ、同党の躍進を願う人々が少数派として存在するが、通称、進歩的文化人と呼ばれる知識人や一部の左派活動家に限られてきた。その共産党がここにきて2022年までに連立野党政権を発足する構想を打ち上げ、他の政党に連合を呼びかけているという。そして共産党の甘い誘いに揺れる政党、政治家が出てきたというから、やはり問題視せざるを得ないのだ。

日本共産党は「ソ連・東欧共産党政権は真の共産党政権ではなかった」と弁明する。イスラム過激派組織がテロをする度に、欧州居住のイマーム(イスラム教指導者)が「あれは本当のイスラム教ではない」と説明するのと同じ論理だ。日本共産党はソ連・東欧共産党政権と同じく、プロレタリアート独裁政権を放棄せず、民主集中制を堅持しているのだ。

共産党はこれまで党綱領を改定したが、その中身は何も変わっていない。共産党の看板を先ず下ろし、党の「粛清の歴史」に対し国民の前で説明し、謝罪すべきだろう。戦中の旧日本軍の言動に対して謝罪を要求する前に、日本共産党は自らの過去を謝罪すべきだ。全てはそれからだ。

野党の中には選挙対策のために共産党と連携を深めていこうとする動きがあるが、危険な冒険だ。共産党の笑みに騙されてはならない。彼らは大人しく、従順な羊ではないのだ。日本共産党が公安の「監視対象団体」なのは理由があるからだ。

「共産党脅威説」は単なるプロパガンダではない。日本の野党議員は「オーストリア共産党」を研究すべきだ。第一のテーマは「なぜオーストリア共産党(ミルコ・メスナー議長)は国民議会選で議席を獲得できないのか」だ。そして第2の課題は「なぜシュタイアーマルク州で4人の共産党議員が生まれたのか」だ。日本の野党の先生たちには上の2点をテーマに現地視察されることを勧める。

特に、第2のテーマは日本共産党ばかりか、全ての政党の議員たちにも啓蒙的な内容があると確信している。そこで少し説明する。

シュタイアーマルク州議会とグラーツ市議会で州共産党は4議席を持っている。同州はオーストリアの中でも伝統的な州であり、革新的な州ではない。実際、同州知事は保守派国民党が握っている。その州で、オーストリア共産党の州共産党は有権者の支持を得て、4議席を得た。なぜか。

州共産党議員は議員手当を得ると3分の2は困窮な州国民のために献金し、各議員は生活に必要な2000ユーロだけを得ている。今年だけでも2076家庭、困窮者に約18万5000ユーロを寄付しているのだ(オーストリア代表紙プレッセ12月28日付)。

ローレックスの腕時計をし、高級車を乗り回すオーストリア社会民主党関係者とは違う。社民党が選挙の度に得票率を失うのは、労働者の政党を標榜しながら、自身は全く別世界で生きている議員が余りにも多いからだ。理想は立派だ。党綱領の内容も国民党に負けないが、その理想の実践が足りないのだ。口ではいいことを言っても、実際の生活ではそれを実践しない政治家を国民は信頼しない。

州共産党の理想はやはりプロレタリアート独裁だろうが、その理想とする公平で貧富格差の是正という点では実践しているわけだ。州共産党の4議員が特別利他的な政治家かどうかは知らないが、少なくとも実践していることは間違いないから、選挙では一定の支持を得るわけだ。

ちなみに、オーストリア日刊紙スタンダートの「声の欄」には、1人のカトリック教信者が「自分は神を信じているが、共産党議員は人間的にもいい人で、州国民に奉仕しているから、選挙では同議員に票を入れてきた」と述べている。

シュタイアーマルク州共産党の実態は日本共産党にとっても学ぶべき点があるはずだ。赤旗に論文を書き、党会議で政策を披露し、国会で与党批判を展開できても、国民の福祉、公平な社会実現のために自ら犠牲を払う実践活動がなければ、それは偽善に過ぎない。この点は日本共産党だけでないだろう。他の与野党の先生たちにも言えることだ。

このコラムには、「『共産党』を“誤解”している野党議員へ」というタイトルをつけることにした。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年12月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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