前澤友作氏が提案「ベーシックインカム」は、日本を救う一手となるか?

音喜多 駿

こんにちは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。

Twitterトレンドに「ベーシックインカム」が上がってきたので驚いていたら、またも「フォロー&リツイートで100万円キャンペーン」を行っていた元ZOZO・前澤友作さんが仕掛け人だったようです。

私は流石にこのキャンペーンには否定的な見方をしていましたが、この政策提言・世論喚起のために1億円を費やすのだとしたら、唸ってしまう一手ですね…。

ベーシックインカム(BI)とは、国・政府が国民に対して最低限の生活を送るのに必要な金額を毎月支給するという政策です。

究極の貧困解決策・アルティメット福祉として以前から議論・実証実験が行なわれているものの、まだ大規模な実施に踏み切った国家はありません。

字面だけ聞くと大規模なバラまきのように感じられるのですが、実はこのBIというのは経済右派(小さな政府派)からも左派(大きな政府派)からもそれぞれ異なる理由で賛同される可能性がある、非常にユニークな立ち位置にある政策なのです。

実際に、前澤友作さんは政治的な発言を読み解く限りかなり左派的な思想の持ち主のようですが、今回のようにBIを強く進言していますし、世間から「新自由主義」とレッテルを貼られている堀江貴文さんのような方もBI支持者であることを公言しています。

左派・大きな政府支持の方がBIに好意的なのは、わかりやすいと思います。人権の観点からも、人々に国がお金を出して面倒を見ることは当たり前だ!どんどん支出したまえ!というわけですね。

一方で、経済右派・小さな政府支持者はなぜBIを容認するのか。

それはBIが劇的に行政を効率化できる可能性を持っているからです。

BIが導入されれば、生活保護や年金などの複雑な福祉政策がほぼすべてBIに一元化できるため、福祉行政に従事している人員を半分~3分の1にできると言われています。

極力政府に頼らない・自立と自律を目指す自由主義者としては、BIを積極的に支持するかどうかは議論が分かれるところではありますが、今の肥大化を続ける行政システムに一石を投じることができる「一歩前進」施策として、私自身は好意的に捉えています。

実際、BIの兄弟と言われ、ほぼ同じ仕組みを持つ「負の所得税(給付付き税額控除)」という政策パッケージを考案したのは、自由主義者の大家とも言われるあのミルトン・フリードマンです。

(「資本主義と自由」は必読バイブルなので、年末年始のお休みにぜひ!)

極端な自由主義者以外は、政府に再配分などの役割が残ることを否定しません。

生活保護の捕捉率が2割程度と言われ、一方で破綻寸前で複雑怪奇な年金などを維持するのに精一杯なっている我が国にとって、ベーシックインカムは救国の一手となる可能性があります。

またベーシックインカムは福祉を効率化するだけではなく、実は財政政策・財政出動も効率化できる可能性があります。

数々の無駄な公共事業や地方創生バラマキ政策に代表されるように、中央政府に合理的な財政出動を選択する能力はありません(少なくとも私はかなり懐疑的です)。

しかし景気が循環していく中で、不景気の際は政府支出によって民間に資金を供給しなければいけない場面が来るとすれば、BIで国民に還元して自由に使ってもらうのは極めて合理的な財政出動です。

BI推進派の経済学者であるガイ・スタンディング氏や井上智洋氏は、国の経済状況に応じて自動的に支給額を上下させる「変動BI」という仕組みを提唱しています。

好景気の時はBIで支給される金額が下がり(金融引き締めや緊縮財政等と同効果)、不景気の時は逆に支給額が上がる(金融緩和や財政出動等と同効果)。

こうしたBIを景気の調整弁とし、政府や政治家の判断に頼ることなく自動化できれば、非効率な公共事業は極小化され行政組織もさらに合理化できるでしょう。

実現にはかなり政治的ハードルがあるものの、大いに検討の余地がある提言ではないでしょうか。

さらに詳しくは「AI時代の新・ベーシックインカム論」をご参照下さい。

 

こうしたベーシックインカムについては、日本維新の会はたびたび国会質疑で取り上げており、現在は次の衆院選に向けて党公約・政策パッケージへの導入を積極的に検討している最中です。

昨年末までという目標には間に合いませんでしたが、その分ブラッシュアップした政策ビジョンをお示しするべく、議員一丸となって引き続き政策検証を続けて参ります。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会、地域政党あたらしい党代表)のブログ2020年1月2日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。