奇々怪々のゴーン逃亡劇を司法は無警戒

2020年01月03日 16:00

政府は早急に声明を出せ

元日産会長のゴーン被告の大逃亡劇について、様々な情報が飛び交い、攪乱が目的の情報、ねつ造したらしい情報も入り混じり、奇々怪々です。テレビの定時ニュースや印刷時間が決まっている新聞に先行して、ネット情報が拡散され、何が真実を巡り、われわれは想像力のレベルを試されています。

Wikipedia、官邸サイトより

はっきりしてきたのは、世界中で日本のぶざまな危機管理の失態が話題にされ、検察、警察、出入国監理部局がゴーン被告の海外逃亡にあまりに無警戒だったことです。「どうぞ逃亡して下さい」と、言わんばかりの監視体制でした。さらにレバノン、フランス政府が声明をだしているのに、日本政府は年末以来、沈黙を守り続けている。国際的な情報戦にこれでは負ける。笑われています。

早く記者会見を開くなり、声明を出すなりして、情報戦に負けないようにしなければなりません。政権のトップはゴルフに興じたり、年始の挨拶に追われている時ではない。やっているのは、検察あたりが小刻みに流している断片的な情報ばかりです。

危機管理に対する日本の能力が試されているのです。経営者史上、最大級の犯罪者に裏をかかれ、監視の抜け穴を見抜かれ、レべノンへの逃亡を許してしまった。北朝鮮あたりの工作員が国内にいるとしたら、日本は高枕の正月です。

ケースの鍵など壊すのは簡単

まず、被告が持っていた二冊目のフランスの旅券です。海外との行き来が多いフランス人は二冊、旅券を持つそうです。日本にいるゴーン被告については、旅券の携帯義務があるからという理由で、日本でも認めた。笑ってしまうのは「透明の携帯ケースに収め、カギをかけているから大丈夫」という弁護士側の説明です。こんなものは、工作員が壊そうと思えば、一瞬でできる。弁護士もいい加減だ。

次は、被告の住居の玄関に設置した監視カメラです。リアルタイムで監視していると思っていたらそうではない。映像を定期的に裁判所に提供するという義務は課していただけです。「押収してこれから調べる」とは。時、すでに遅し。なんのための監視だったのか。裏口や窓から出入りしたらどうするのだ。監視カメラをすり抜けることなど、日本の空き巣でもできる。

逃亡の可能性のある最重要人物だから、外出時は密かに尾行をしているのかなと、思ったら違う。携帯電話の通話記録の提出義務もあった。重要な会話をするなら、別な携帯電話を用意する。子供でも思いつくことです。

泳がせ高飛び寸前に逮捕ならよし

Wikipedia

「海外逃亡するはずはない」という思い込みや性善説に基づいた監視体制としか思えません。当局に悪知恵があったら、被告を泳がせておき、情報を収集し、海外に高飛びする寸前に再逮捕する。それなら褒められる。「やはりゴーンは悪党だ」という印象操作にもなったはずです。

冒頭に触れた情報戦もまったく出遅れています。「音楽バンドが訪問し、ゴーンを楽器箱に収納して運びだした」は、海外の誰かによる創作らしい。「逃亡劇のシナリオを作り、指揮したのはゴーン夫人」という話には否定情報がある。攪乱が目的か、愉快犯の仕業か。創作にしては、もっともらしい。主観的で意図的なブログも多く、情報戦は手が込んでいます。

メディアは政府の情報戦の遅れ、司法当局の無警戒ぶりを批判していません。「保釈のあり方に議論も」(朝日新聞)、「保釈制度は対策に甘さ」(日経新聞)と、のんびりしています。監視カメラの使い方、密かな尾行とか、応用編でいくらでも工夫し、逃亡を防げるはずです。

来週の8日、ゴーン被告が記者会見する予定です。言いたい放題でしょう。真実をいうかではなく、いかに自分に有利なように、国際世論を味方につけるか、日本の司法をいかに悪者に印象付けるか。日本は先手を打たないと、ゴーン被告の悪態にいいように攪乱されます。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2020年1月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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